2013 Fiscal Year Research-status Report
政策反応関数を用いた短期金利の実証分析~金利平滑化と政策シフトの検証~
Project/Area Number |
25380392
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中島 英喜 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (90510214)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 政策反応関数 / 短期金利 / 金利の平滑化 |
Research Abstract |
本研究は、日本と米国の短期金利に関する過去半世紀の時系列を用いて、その動学を長期的な観点で分析するものである。分析にあたっては、短期金利を政策的に管理する中央銀行の行動を政策反応関数として定式化し、関連する5つの仮説を順次検証する。 平成25年度は、(1)1994年以前において日本銀行は短期金利の変動を平滑化していたかという仮説と、(2)過去半世紀において金融政策に何らかのシフトが生じたかという仮説の検証を目的とした。 まず(1)の仮説に関して、中央銀行による政策金利の平滑化を支持する先行研究は数多い。これに対しRudebusch(2002)は、Taylorルールで説明できない短期金利の変動を考え、独自の実証分析によって平滑化に否定的な結論を導いている。本研究では、これらの先行研究が用いている標準的な政策金利モデルの制約を指摘し、中央銀行の行動をより柔軟に説明できるモデルを用意した。日本のデータを使ってこのモデルを推定したところ、標準的なモデルの制約の当否について異なる検証結果が得られた。そこで、中央銀行の金利参照が非線形な反応をもたらす可能性を考慮し、改めて検証を行った。その結果、金利の参照による中央銀行の行動はむしろ限界的であり、この反応の非線形性を考慮しないモデルを用いると、金利の直接的な平滑化を過大評価することが示された。 次に上述のモデルを用いて、(2)の仮説の実証を行った。なお政策シフトの内容は多岐にわたり、シフトのタイミングも多様である。このため、網羅的かつ慎重な分析が求められる。実証の結果、日本と米国において過去半世紀の間に数回の政策シフトが生じた可能性が示唆された。また、米国に関しては、Jondeau et al.(2004)が指摘したのと同様のシフトを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で順次実証予定の5つの仮説のうち、平成25年度は2つの仮説の実証を目標としていた。結果、いずれも当初予定の進捗を得た。なお、これらの仮説は、その後の3つの仮説にも深く関係するため、今後も追加、修正等の作業が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26と27年度は、上記(2)の政策シフトの分析を継続しながら、順次、(3)政策のシフトが生じた時にこれらのシフトも平滑化されるのかという仮説と、(4)1995年の円金利の低下はデフレ回避の予防的引き下げだったのかという仮説を検証する予定である。 これらの分析の内、(3)と(4)の分析は、(2)の政策シフトの特殊ケースに相当する。また、この内(4)は、Orphanides and Wieland(2000)等が提起した仮説に基づく。彼等は、名目金利の下限の顕在化により金融政策の自由度が制約される点に着目し、中央銀行が予防的な刺激策を補完的に実行する可能性を指摘した。筆者の知る限りこの仮説の実証は未だ十分でないため、(4)の分析でその検証を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主な理由は2つ。まず、PCをはじめとしたIT機材について、翌年度(平成26年度)以降にバージョンアップが予定されているものが複数あったため、年度内の購入を控えたこと。もうひとつは、実証の手法や結果に関する検討先立ち、まずは複数のデータセットに対する複数のモデルの適用結果の入手を進めたため、結果の吟味に基づく意見交換の頻度(旅費)が当初予定に比べて抑えられたこと。 平成25年度末における次年度使用額は、実証分析や意見効果交換に用いるIT機材の購入や意見交換の旅費として、残りの3年間で順次適当に割り当ててて執行する予定である。
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