2016 Fiscal Year Annual Research Report
Institutional Investors in Japan's Corporate Governance
Project/Area Number |
25380397
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
葉 聰明 国際教養大学, 国際教養学部, 教授 (20404858)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 買収防衛策 / 企業統治 / 企業価値 / エントレンチメント仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)本年度の研究課題では日本企業による買収防衛策の導入と廃止の株価効果をあわせて実証分析したものである。会社法の改正により買収防衛策の法整備が整った2005年から2007年の間、防衛策を導入した企業を分析のサンプルとし、その後、2016年までの間、買収防衛策を継続したり、廃止したりするグループに分け、その違いを比較分析することによって防衛策の効果を検証する。防衛策を導入した企業には共通する特徴があると考えられるので、初期において防衛策を導入した企業に絞ることによってその特徴の影響・効果をコントロールできると考えられる。
(2)130社の導入企業について、アナウンスメント日の前後3日間においての異常株価リターンを調べた結果、平均が-0.63%で、中央値が-0.97%に達しており、両方とも統計的に有意である。この結果はエントレンチメント仮説を支持し、すなわち防衛策の導入は経営陣の保身として投資家に映って見えると解釈できる。さらに、導入企業のなか、80社は2016年まで防衛策を継続・更新しており、14社は一回の更新をしたのち廃止、7社は二回の更新をしたのち廃止、15社は三回の更新をしたのち廃止、9社は四回の更新をしたのち廃止したことが分かった。防衛策の廃止に関するアナウンスメント日が確認できた30社について、アナウンスメント日前後3日間における異常株価リターンを調べた結果、平均が1.22%で、中央値が0.88%であった。この結果もエントレンチメント仮説を支持し、すなわち防衛策の廃止は企業価値の向上につながると解釈できる。本課題の研究結果は、防衛策の廃止を求める株主提案が企業価値を高めるとの先行研究に一致しており、買収防衛策は企業統治や企業価値の観点から望ましくないということを意味する。
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