2013 Fiscal Year Research-status Report
トヨタ生産方式における賃金と連動した原価・能率管理体系とその進化に関する調査研究
Project/Area Number |
25380426
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
清水 耕一 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (00235649)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トヨタ生産システム / 生産手当制度 / 生産管理 / 能率管理 / 生産性向上活動 |
Research Abstract |
平成25年度は研究計画に基づいて、①1999年までの生産手当(歩合)と密接に関連する能率管理の仕組みと具体的な運用についての聞き取り調査、および②関連する研究会と学会報告を実施する予定であったが、一部変更して以下の事業を実施した。 ①トヨタ生産システムの基本の理解のために岡山大学経済学部・工学部共通講義「ものづくり経営論」の講師を担当してもらった元トヨタ自動車取締役・現トヨタ紡織特別顧問の好川純一氏、元トヨタ自動車生産管理部査業課主任、現中部品質管理協会副会長の講義を録音・文章化した。この講義をもとに、好川氏には生産管理部での仕事、生産調査室での仕事、および自主研活動の実際について聴き取り調査を行った(計3回各1.5時間)。元生産管理部査業課主任には1999年までの能率管理の実際について聴き取り調査(1回4時間)を行うとともに、同氏の仲介でトヨタ自動車生産管理部生産性マネジメント部に対する2013年現在の生産性向上活動の仕組みについて聴き取り調査を行った(1回1.5時間)。この調査により、トヨタ自動車の能率管理・生産性給制度が大きく変わったのは当初予定されていた2000年ではなく、2004年であることが分かった。 ②学会報告については、日本の自動車メーカーの1993-2012年までの経営戦略を主に日本自動車工業会と各社の有価証券報告書のデータに依拠して実証したStructural Change of the Market and Profit Strategy of Japanese Carmakersを欧州進化政治経済学会(EAEPE)第25回年次大会において報告し、同報告において他の自動車メーカーと比較したトヨタ自動車の経営戦略の特徴を示した。同報告については報告資料としてpptファイルとともにディスカッション・ペーパーをEAEPEの大会ホームページ上で公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定した1999年までの能率管理についての聴き取り調査について、予定した好川純一氏と元生産管理部査業課主任に対する聴き取り調査は計画どおりに実施できたが、生産管理部を経験し著書を発表している元トヨタ自動車従業員については準備不足から実施できなかった。その反面、2004年以降の生産性向上活動と能率管理の仕組みに関するトヨタ自動車生産管理部生産性マネジメント部への聴き取り調査という予定外の、重要な調査を実施できた。また、計画外ではあったが、トヨタ自動車の海外工場におけるトヨタ生産システムの導入実態について、同社イギリス工場の元副社長にも話を聞くことができた。以上のように、内容からすれば、事業計画に変更はあったが、能率管理・生産性向上活動の実態と歴史についての基本的な調査は計画以上に実施できたと考えている。 研究会活動は聴き取り調査の実施時期が遅かったこともあって実施できなかったが、自動車産業の国際共同研究組織GERPISA(本部はパリ)の国際セミナーにおける報告については、欧州進化政治経済学会(EAEPE)の年次大会(パリ・ノール大学、パリ、フランス)のGERPISA企画セッション(2セッション)において調査結果の報告ではないが、日本の自動車メーカーの経営戦略の比較研究の成果を報告した。提出したディスカッション・ペーパーは改善して、平成26年度のGERPISAの国際シンポジウム(於・京都大学)において発表し、その後、共著書の一部として発表される予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に予定していた2004年以降のトヨタ自動車の原価・能率管理に関する聴き取り調査については、生産管理部への聴き取り調査は完了していることから、新しい技能系賃金制度についてトヨタ自動車人事部への聴き取り調査と新しい能率管理・生産性向上活動についてのトヨタ自動車労組に聴き取り調査を計画するともに、平成25年度に実施できなかった著書を発表している生産管理部を経験した元トヨタ自動車従業員についての聴き取り調査を計画している。とくに、平成25年度の調査で明らかになったことであるが、2003年までの生産性給制度に連動した能率管理は大きく変更されていることから、新しい制度がどのようなものであるのかということのみではなく、なぜそのような変更が行われたのかという理由についても研究する計画である。 当初計画では、サプライヤーおよびディーラーのサンプル企業に対する聴き取り調査が計画されているが、以下の計画の実施のために、次年度に実施する可能性もある。 平成26年度は以上の聴き取り調査を進めるとともに、研究テーマに関するサーベイ論文を執筆するとともに、調査結果にもとづいて1990年代以降の生産手当制度と能率管理の変遷に関するディスカッション・ペーパーを執筆し、研究会や学会において発表する計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
聴き取り調査時期の遅れから調査結果をまとめることができず、平成25年に計画していた聴き取り調査の一部と2回の国内研究会での報告および国内学会報告が実施できなかったために予定どおりの支出ができなかった。 平成26年度の助成金額は繰り越し分を含めて1,456,525円となる。繰り越し分は主に前年度未実施の聴き取り調査旅費・謝金とテープ起こしに使用する予定であり、使用計画(千円以上)は以下のとおりである。原価管理・能率管理関係図書50千円、国内旅費556千円(研究会打合せ旅費100千円、調査旅費356千円、学会報告旅費100千円)、外国旅費450千円(学会報告・研究者との打合せ旅費)、人件費・謝金350千円(テープ起こし・謝金)、その他50千円(複写費等)。
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Research Products
(1 results)