2013 Fiscal Year Research-status Report
両大戦間期インドにおける金融制度の「再編」と中央銀行の役割
Project/Area Number |
25380450
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西村 雄志 関西大学, 経済学部, 准教授 (10412420)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インド準備銀行 / インド帝国銀行 / インド省 / 在来金融業 / 近代銀行業 / rural credit |
Research Abstract |
本年度は、海外出張を中心に資料収集を図る予定にしていたが、既に収集していた資料の分析等に時間を要したため、本科研費を用いた出張等ができず、次年度に課題を持ち越す事となった。 本年度は、インド準備銀行が設立される過程で、インド帝国銀行あるいはインド省において、どのような議論が展開されていたのか、旧インド省文書館の史料を中心にして、他には英国議会文書や同時期に刊行された経済雑誌も参照しながら、情報の整理に取り組んだ。本科研費を申請した段階よりも情報が多く、そのために今後の議論を考えて行く上での「交通整理」に時間を要した。そのため新たな一次史料を求めてインドやイギリスに赴く時間がなかった。 そのような既に手元にあった史料の分析に多くの時間を割いたが、そのなかでも本科研が採択された後に知り得た二次文献のなかで引用されていた一次史料について、本科研費で取り組む研究の目的を深化させる上で大変有益なものであることを見出した。次年度はこの史料を収集・分析するところから始めたい。今のところ、この史料も大英図書館の旧インド省文書館に所蔵されていることがわかっており、本科研費を用いてオンラインを通じて早々に入手したいと考えている。その結果、次年度は本科研費の研究目的に沿ったワーキングペーパーを書ければと考えている。 本科研費の意義は、申請時に述べた通り、伝統的に農村部で活躍していた在来の金融業者や19世紀末から活躍していた近代銀行業が、両大戦期にインド準備銀行という中央銀行が設立される事で、どのように統合されていったのか、あるいは統合されなかったのか、実証的に明らかにするところにある。当該年度では、その議論の基盤を整備する事にほぼすべての時間を傾注した。次年度はこの基盤を踏まえて更に議論を深めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先にも述べた通り、本科研費の研究テーマを推進するにあたり、これまで収集してきた資料を収集分析して整理する事を最初の課題として取り組んだ。申請時には概ね半年で終わる予定にしていたが、当初想定していた以上に史料の分析に時間と手間を要し、結果として年度一杯を費やす事となった。しかし、その結果、申請時には見出せていなかった論点が複数見つかり、今後の議論を展開させていく上では有益なものとなった。 進捗状況と言う点では遅れている点は否めないが、今後の議論を深化させていくと言う点では、大変有益な年度であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
既に入手していた史料の分析は概ね済んだ事から、今後はそのなかで見出された論点を深める事を大至急進めていきたいと考えている。そのため新たに見出した一次史料、とくに大英図書館・旧インド省文書館に所蔵されている史料から取り組みを始め、早い段階でインド国立公文書館、インド準備銀行アーカイブスの史料にもアクセスしたいと考えている。それらと並行して、近代銀行業の代表としてHSBCのインド各支店や横濱正金銀行のインド各支店の活動、インド農村部におけるrural creditの変容についても分析を始め、これまでの論点を多角的に深めていく作業をしていく。その結果、ワーキングペーパーを適宜発表していく事で、多くの研究者からの批判等を頂くことにも努めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請時に予定していた既に収集してきた史料の分析に当初想定していた以上の時間を費やす結果となった。そのため海外出張等の大きな費目の出費がなく、そのため次年度への繰り越しを申請する事となった。 初年度で既に収集した一次史料の分析が進んだので、今後は繰り越した金額を含め、当初から予定していた一次資料の新たな収集を中心に、科研費を使わせて頂く予定にしている。とくに大英図書館・旧インド省文書館にある関係する一次資料を収集し、そのうえでインド国立公文書館やインド準備銀行のアーカイブスにも問い合わせさせて頂き、可能な限り新しい一次資料の発見に努める。そのため科研費で出張費ならびに資料購入費を充当する予定にしている。加えて、一次資料の整理や統計資料の入力等の作業は、大学院生を中心に依頼する予定にしているため、そのための謝金も科研費から支出させて頂きたいと考えている。その結果、working paperの執筆も進めたいと考えているので、英文校正等の経費についても、科研費の方で支出させて頂く予定にしている。
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