2014 Fiscal Year Research-status Report
両大戦間期インドにおける金融制度の「再編」と中央銀行の役割
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25380450
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西村 雄志 関西大学, 経済学部, 准教授 (10412420)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インド準備銀行 / 中央銀行 / 国際銀行業 / 金本位制 / 決済の重層性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、両大戦間期のインドにおける国際銀行業の展開を軸に研究を進めた。中央銀行設立に密接に関係していた国際銀行の役割を見る事で、最終年度に向けた重要な研究視角を得る事が出来た。とくに香港上海銀行(Hongkong and Shanghai Banking Cooperation)や横濱正金銀行のインド各支店の一次資料を見ていくなかで、両大戦間期のインド経済がどのように世界経済のなかに組み込まれたかを認識できたことは大きかった。そうした国際銀行の活動が活発化するなかで、どのように中央銀行設立の機運が高まっていったのか、その一端を知る事が出来たことも、今後の研究のなかで重要な知見となることは確かである。次年度は、こうした国際銀行業の研究を更に進めるとともに、両大戦間期の中央銀行設立の具体的なプロセスの研究に、これまで研究してきた通貨政策の観点や貿易環境の変化の側面に国際銀行業の観点を加える事で、新たな研究成果を挙げる事を次年度の目標としたい。 1935年に設立されたインド準備銀行の中央銀行としての機能については、多くの研究者が、その成り立ちについて様々な議論を展開してきていた。本年度までに概ねそのような研究成果についてはサーベイ出来たものと思われる。また一次資料についても、British Libraryの旧インド省文書館にあるものに関しては、概容は把握できたと考えている。インド国立文書館にある一次資料については、未だ不十分の感が歪めないが、これまでの研究成果を見る限り、旧インド省文書館の一次資料すら十分に活用されているとは言い難いことから、最終年度も引き続き、旧インド省文書館の一次資料の分析を優先して取り組み、次年度末までには成果の一端を英語でまとめ、少なくともDiscussion Paperのかたちで発表したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、これまでのインド準備銀行の研究成果をサーベイする事と主にBritish Libraryの旧インド省文書館に所蔵されている関連する一次資料の状況を把握する事に、当初の予定より時間を要した。加えて、先述の国際銀行業の研究、両大戦間期の主として統計資料を駆使した貿易環境の研究、またフンディや日本商社の現地における棉花買付の事例研究等で時間を要し、それらの研究時間でインド準備銀行の研究時間が減った事も歪めない。しかし、次年度は、そのような研究成果から得られた知見を活かし、当初の構想では見出されていなかった研究成果を発表できると考えており、具体化出来る様に鋭意努める予定である。 今のところ、これまでの研究成果をしっかりとサーベイし、主に旧インド省文書館に所蔵されている一次資料については把握できているが、インド国立公文書館の一次資料の把握については未だ不十分であることは歪めない。しかし、旧インド省文書館の方が整理が進んでおり、加えてこれら一次資料すら十分に分析されていないことから、次年度もまずは旧インド省文書館の一次資料の分析から取り組みたいと考える。そのうえで暫定的な成果として英文のDiscussion Paperを発表し、可能な限り研究を前進させられる様に努める予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、まず先行研究で主として駆使されてきた一次資料を改めて分析するところからはじめ、そのうえで先行研究が十分に検討してこなかった資料の分析を行おうと考えている。この分類に関しては、既に本年度までに行っており、概ね把握できている。また、これまでのインド準備銀行の研究が中央銀行史あるいは植民地政策史に偏っていた事から、貿易史や国際銀行業史の観点も加味しながら、新たな研究成果の知見を獲得したいと考えている。 これまでの研究を通じて、インド準備銀行設立は、単に英国による植民地支配の円滑化の意図だけで設立されたものではない。当時のインドが貿易や資本移動を通じて世界市場との連関性を急速に強めており、農村部においても短期間で貴金属貨幣から政府紙幣へと主要貨幣の転換が見られており、インド経済が末端に至るまで急速に世界経済に統合されていった時代でもあった。そうした世界経済への統合は、英国の植民地政策が主たる要因ではなく、むしろ植民地政策史の研究成果とは一線を画するものと言える。次年度は、インド準備銀行を英国支配の立場からではなく、むしろ世界経済のなかで重要な地位を占めつつあったインド経済によって必要とされたという点を強調して考える事にしたい。換言すれば、英国はインド経済から求められたニーズを踏まえ、インド準備銀行設立に動いたのであり、英国の利害を貫徹するためだけで動いたものではなかったと描きたい。無論、植民地支配を肯定する結論にする意図はないが、両大戦間期のインド経済は既に自立した確固たる地位を築きつつあり、インド準備銀行設立はその大きな一つの具体例と本研究課題の結論として描きたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた外国出張が、校務の関係で減らさざるを得なかった事と英国より半月程度の期間で招聘する予定であった研究者が、諸事情によりキャンセルになったため、支出計画に挙げていた金額を執行する事ができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、海外出張を当初の計画より1回増やし、現地における調査を当初の予定より時間をかけて行う事にする。また招聘予定であった研究者については、次年度の都合を再度確認して、可能であれば実施する。 次年度は、必要となる一次資料を収集し、それらを精緻に分析する事、そのうえで英文で成果を発表する事に専念したい。従って、資料の購入費、収集した資料のデータ整理を手伝ってもらう大学院生への謝金、発表する英文の校閲料が主たる助成金の支出項目になる。
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Research Products
(2 results)