2014 Fiscal Year Research-status Report
英国「マネー・ドクター」に関する研究‐オットー・ニーマイヤー卿と大不況下の世界
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25380453
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Research Institution | Hachinohe National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 純 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30413719)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 「マネー・ドクター」 / イングランド銀行 / オットー・ニーマイヤー卿 / 多角的決済システム / スターリング圏 / 封鎖ポンド / アルゼンチン中央銀行 / 国際通貨ポンド |
Outline of Annual Research Achievements |
英国「マネー・ドクター」オットー・ニーマイヤー卿(Sir Otto Niemeyer)の活動を実証的に明らかにすることを目的として、英国国立公文書館(The National Archives)所蔵の大蔵省や外務省、さらには農務省の資料を収集・読解する作業を行ってきた。今年度の目標としていた作業が概ね計画通りに進行したことにより、研究成果を学会、学術雑誌において発表する段階に達した。 具体的には、1939年10月にイングランド銀行とアルゼンチン中央銀行の間で締結された支払協定(Payment Agreement)に関する研究を行ったが、同協定の締結において、イングランド銀行アドバイザーとしてニーマイヤー卿が大きな役割を果たしたことが明らかになった。併せて、同じく当時の英国の代表的な「マネー・ドクター」といえるイングランド銀行のコボウルド(C.F. Cobbold)や大蔵省のウェイリー(D.Waley)の役割も明確にすることができた。英国の「非公式帝国」とされてきたアルゼンチンにおける英国「マネー・ドクター」の積極的な活動が実証的に明らかにされたことにより、第二次世界大戦以降のイギリスの通貨外交に関する研究への展望を切り開くことが可能となった。 以上の研究成果を2015年5月17日の日本西洋史学会第65回全国大会において発表することが決定しており、すでにその報告要旨とレジュメは作成済である(報告タイトル:「非公式帝国の戦争協力‐第二次世界大戦期におけるイギリス‐アルゼンチン間支払協定‐」)。同時に、社会経済史学会の機関誌『社会経済史学』に論文を投稿済であるが、これについては未だ採否の結果が出ていない状況である。しかし、不採択になったとしても、今年度中に研究内容を充実させ、再度他の学会誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未だ英国「マネー・ドクター」オットー・ニーマイヤー卿の活動の全貌を把握するには至っていない一方で、当初予定していた1930年代大不況下の時代を越え、第二次世界大戦期にまで研究対象時期を拡大することができた。ニーマイヤー卿の活動の全貌を把握するという目的を果たすには至っていない一方で、研究対象時期を拡大することができたので、「おおむね順調」と評価するにいたった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究は、1930年代大不況期における英国「マネー・ドクター」オットー・ニーマイヤー卿の活動を把握するという当初の目的から若干逸脱したと言わざるをえない。しかし、イギリス帝国が衰退局面に達した20世紀中葉における英国「マネー・ドクター」の活動を明らかにするという基本的な目標からは逸れてはいない。したがって、この基本的目的を確実に達成することを展望しながら最終年度の研究を進めていきたいと考えている。 最終年度の具体的な目的は以下の通りである。2015年5月17日に富山大学で開催される日本西洋史学会第65回全国大会において、26年度までの研究成果を発表することが確定している(報告タイトル:「非公式帝国の戦争協力‐第二次世界大戦期におけるイギリス‐アルゼンチン間支払協定‐」)。同学会における意見・批判を踏まえ、さらに一次資料を読み込んだ上で研究成果を論文にまとめていきたいと考えている。実は、既に社会経済史学会の機関誌である『社会経済史学』に論文を投稿済の段階であるが、おそらくこの論文は大きな修正を要求されるであろう。したがって、この論文を修正・充実させる作業が最終年度の主な目的となる。 以上の作業によって、これまで明らかにされてこなかった第二次世界大戦以降の英国「マネー・ドクター」の活動、そしてイギリスの対外金融・決済関係の実態が実証的に明らかにされると考える。そして、1930年代における英国「マネー・ドクター」の活動に関する研究を踏まえ、第二次世界大戦以降の英国通貨外交の本格的研究を展開していく上での糸口をつかむことになるであろう。「第二次世界大戦以降の英国通貨外交に関する研究」は、28年度の科研費研究の申請テーマとして考えているものである。したがって、最終年度は、現在の研究を今後の科研費研究につなげていく作業も併せて行うこととなる。
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Research Products
(2 results)