2015 Fiscal Year Research-status Report
製紙資本における多角化状況の違いが企業自身及び林業・木材産業の発展に与えた影響
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25380455
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
嶋瀬 拓也 国立研究開発法人 森林総合研究所, 北海道支所, チーム長 (80353720)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 総合林産企業 / 多角化 / 原料調達方針 |
Outline of Annual Research Achievements |
米国、カナダ、フィンランドなどの主要林産国では、製紙部門を核とする複合林産企業の発達が広範にみられ、地域の木材・木製品(紙・パルプを含む)供給の多くを担っている。これに対し、かつて主要林産国の一角を占めてきたわが国には、このような企業の発達はみられない。こうした違いが生じた要因を考察するため、文献・資料を用いて、日米両国における製紙業の生成・発展のようすを比較検討した。まず、日米の大手製紙会社における製紙業への参入時期や参入前の業種を比較したところ、日本では、①1870年代以降の、近代化・殖産興業の流れの中で導入された新産業としての参入、②同時期以降の、上下流部門など関連産業からの垂直多角化としての参入というパターンが、米国では、①17世紀以降の、襤褸(ぼろ布)を原料とする製紙業としての参入、②同時期以降の、上下流部門など関連産業からの垂直的多角化、③19世紀後半以降の、林業・林産業からの垂直的・水平的多角化という参入パターンがみられた。次に、日米各2社の製紙会社(日本:王子製紙、富士製紙、米国:インターナショナルペーパー、ウェアハウザー)について、製紙業への参入から第二次世界大戦前までの原料調達方針の変遷を比較した。日本では国有林の年期契約が中心で、常に不安定であったのに対し、米国では、パルプ原料として木材の利用が始まった19世紀後半以降、製紙会社は国内の林地購入やカナダの伐採権取得を進め、長期安定的で自由度の高い原料基盤の確保に取り組んだ。このような原料調達方針の相違と、複合林産企業の発展における地域差とをただちに関連づけることはできないものの、その一因となっている可能性は考慮すべきと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、製紙会社の多角化状況に国・地域ごとの違いがあることを確認した上で、そのような違いが生じた要因と、その違いが林業・林産業に及ぼした影響を比較史的手法により明らかにすることである。当年度はこのうち、多角化状況に違いを生じた要因について検討すべく、日米における製紙業の生成・発展を比較検討し、彼我において製紙原料としての木材調達方針が大きく異なったことを明らかにした。この相違が多角化状況の違いにどれほど影響をしたかについては断定できないが、少なくとも多角化状況の違いを説明する上で考慮の必要があることが分かり、次年度以降の検討につなげることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
林業・林産業・製紙業の3産業部門を対象とする国際比較産業史分析により、これら3部門間の関係性に係る地域差と、そのことがこれらの三者にもたらした影響を検討する。
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Causes of Carryover |
(1)年度末に出張が予定されていたが、直近まで日程が定まらず、航空運賃等の旅費が確定できなかったことから、余裕を持って計上していたため。(2)新聞記事等データベースサービス(日経テレコン)の従量制料金部分について、予算を超過しないよう、余裕を持って計上していたため。(3)洋書を発注したが、絶版等の理由で入手不可となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍等の物品費、現地調査等の旅費、データ入力補助の作業に必要な非常勤職員賃金に係る人件費、データベース利用料その他の直接経費として使用する。
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