2015 Fiscal Year Annual Research Report
国際比較分析に基づく不動産投資法人の原則主義的財務報告基準と論理の帰納的導出
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25380590
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
近田 典行 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (20245161)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 投資不動産 / IFRS / 測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度(平成27年度)の本年の研究成果としては、当初の確定した分析アプローチに沿って、残る欧州における不動産投資企業の調査を行い、当該企業における前年度の他の地域におけると同様の分析成果を得た。それとともに、総括的な対象国の比較分析結果をまとめ、その法的・経済的諸制度並びに関連する会計ディスクロージャー制度の異質性と共通性についてカテゴライズを行った。その中で、前者に関しては、一般性を持つ異質性と単純に個別性の高い事項に分け、一般性を持つとするルールや慣習に対してそうであることの論理性を原則主義的基準としての機能性の観点から明らかにした。後者の同質性・共通性を有するものに関しては、ただ、統計的にメジャーであるという理由からではなく、投資意思決定情報としての有用性の視点からIFRSの会計概念フレームワークに即して合理性を持つかについて共通する検証結果を得た。 結論として、ボランティアな開示システムに大きく依拠している現在の不動産投資企業への投資情報環境は、ともすれば、一般企業でも時折問題となるクリエィティブ・アカウンティングの最たる土壌となり、投資家保護のための情報が特定の意図に基づいて操作される環境を保持することになってしまうことが明らかとなった。また、リーマンショックや日本のバブル崩壊にみられるように不動産に絡む不況原因は大きな世界的経済停滞を引き起こすことにつながるリスクの認識が求められることを明らかにした。そのなかで、グローバル化している投資対象である不動産投資信託に係る国際比較可能な会計情報とそれを透明化するための会計基準に内在する原則主義的会計論理の抽出と国際比較可能な基準の明文化につなげる基準の導出が不可欠である点を結論とし、その中で測定に関する原則的基準構築の必要性を認識した。
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