2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25380611
|
Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
吉田 雄司 埼玉学園大学, 経済経営学部, 教授 (00406612)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 環境会計 / 環境保全コスト / 環境投資 / 環境費用 / 環境会計情報 / 鉄鋼産業 / 自動車産業 / 化学産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、わが国製造業の環境会計情報を総合的に実証分析し環境会計の基盤を形成することである。2014年度(H26)の研究成果は、鉄鋼産業4社(新日鐵、JFE、神戸製鋼、旧住友金属工業)と自動車産業5社(トヨタ、ホンダ、マツダ、三菱自動車、富士重工業)そして化学産業5社(三菱化学、住友化学、三井化学、東ソー、信越化学)の3業種について学会報告と学術論文として公表したことである。 まず学会では「日本の鉄鋼産業における環境保全コストに関する一考察」(日本会計研究学会第73回大会(自由論題)2014年9月5日:横浜国大)を報告した。この意義は鉄鋼産業4社の2000年度から11年度における環境保全コストの経年推移の金額と事業規模別比較を実証できたことである。特に重要なことは環境投資率と環境研究費率が07年度以降上昇していることと旧住友金属工業が環境に配慮した経営を維持していることである。 また学術論文として「わが国の環境会計情報の分析(6)-自動車産業―」『埼玉学園大学紀要』経済経営学部篇、第14号を執筆した。この論文の意義は、自動車産業5社の2008年度から12年度における環境保全コストの経年推移と事業規模別比較を検証できたことである。特に環境保全コストの構成比で各社とも環境研究開発費への占有率が高いことまたマツダが環境配慮型経営を持続していることが判明した。 そして共著として「日本の化学産業におけるRC活動と環境会計情報の活用」『新世界秩序の構築-地域共同体から地球共同体へ-』文化会計学会研究叢書をまとめた。ここでも化学産業5社の08年度から12年度の環境保全コスト経年推移と事業規模別比較を検証した。重要なことは各社とも公害防止と資源循環コストを多く支出していること、また東ソーが他社に秀でた環境配慮の経営を持続していることが実証できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年度の研究目的は、電機機器7社、総合化学7社、総合建設5社の「環境会計統合フォーマット」の作成とその環境会計の分析一覧表を作成することであった。しかし、各業種の資料収集と分析等を実施しその成果を学会報告や学術論文に執筆するまでの時間が当初より掛かったためやや遅れている。 学会報告は、日本会計研究学会第73回大会(自由論題)2014年9月5日:横浜国大で実施した。本学会の規定で報告者は事前に論文形式でフルペーパーを提出することになっている。このため締切日までその論文を作成する時間を要した。更に当日配布するレジメの作成が必要であった。こうした学会報告の準備でかなりの時間を費やしてしまった。 次に学術論文として2本執筆した。1つは「わが国の環境会計情報の分析(6)-自動車産業-」という題目である。この論文は勤務先の「紀要」論文で査読はない。しかし字数制限のため研究対象企業数を8社から5社に変更するなど論文構成に時間を要した。またもう1つの論文は「日本の化学産業におけるRC活動と環境会計情報の活用」という題目であるがここでも字数制限と図表作成などで時間を要してしまった。この他、査読付き論文にも投稿したが不採用となった。この問題は時間と労力をかなり喪失した。 このように当年度の遅延原因は研究活動の成果を公表するまでの作業時間が予想以上にかかったことである。この他には前年同様バックナンバーなど環境会計情報の資料が必ずしもネット上からダウンロード(DL)できない状況にあったことや、DL作業にパソコンの検索能力不足がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年度の研究課題は次の2点にある。第1に繊維産業の研究成果について学術論文として執筆する。第2に資料蒐集の継続作業として非鉄金属、電機機器、建設業、電力業の環境会計情報を入手する。 第1の学術論文の執筆は9月中旬が締め切りのため夏季休暇で完成を予定している。繊維産業の対象企業は、東レ、クラレ、住江織物、ユニチカ、グンゼの5社である。各社とも10年分の環境会計情報の蒐集を予定している。 (研究計画の変更点)当初対象としていた日清紡は環境会計情報の開示内容が他社と異なっていること、また東洋紡は過去3年分の環境会計情報しか入手できないことが判明したため検証対象から外した。その代わりにクラレと住江織物を研究対象とする。この両社は環境会計情報がweb上から入手可能であり情報開示方法も他3社と近似していることから検証可能と判断した。 第2の資料蒐集作業については、非鉄金属産業として住友電工、三菱マテリアル、古河電工、昭和電工、フジクラの計5社の資料蒐集を、また電機機器では東芝、パナソニック、日立製作所、三菱電機、富士通、日本電気等から同様の蒐集を予定している。昨年同様、有価証券報告書の資料が必要であるが過年度については㈱プロネクサスのネット期間限定利用することにする。 (研究計画の変更点)これまで学術論文として公表できた業種は鉄鋼業(4社)、自動車(5社)、化学(5社)の3業種であり、今年度の繊維産業(5社)を含めても4業種に留まる。このため残りの電機機器産業(7社)、総合建設業(5社)、電力業(10社)の3業種は資料蒐集だけは遂行する予定である。ただ電力業に関しては東日本大震災後の環境保全対策を考慮して当研究計画とは別に検証する必要性があると考える。つまり震災前と後の環境保全活動はどう変化しているのか、また放射性廃棄物累積値や放射線量評価値などの開示が必要と考えるからである。
|