2014 Fiscal Year Research-status Report
小規模農民コミュニティーの形成と日本人移住地を連携した新しい貧困軽減手法の開発
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25380643
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
福井 千鶴 日本大学, 国際関係学部, 教授 (10328677)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 貧困軽減方策 / 農民コミュニティー / 新しい貧困軽減戦略 / 日系人と連携した貧困軽減戦略 / 日系人と農民コミュニティーの連携 / トメアス農業協同組合(CAMTA)ブラジル国 / 貧困軽減戦略 / アグロフォレストリー、ブラジル国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的を達成するために、平成25年度に続き日系人と連携した貧困層農民の家族に効果をもたらす新しい貧困改善方策について実証実験及び現地調査を踏まえ究明するため、研究対象地域のトメアス移住地(日本人移住地)を中心に研究を推進した。平成25年で研究活動及び実証実験の適地としてトメアス移住地を選定したことから、平成26年度も引き続きトメアス移住地を中心に研究調査と実証実験の継続進行、及び小農民家族の農業生産の状況を把握するためトメアスを訪問した。 トメアス移住地以外のブラジル日系人社会について、地域農民と関係の良いサンタカタリーナ州のラーモス日本人移住地、サンパウロ経済圏に近いイトゥ市の日系人社会を訪問し、周辺農民との関連について聞き取り調査を行った。 トメアス移住地における研究を継続的に推進するため、トメアス農業協同組合(CAMTA)と平成26年度の調査研究活動について打ち合わせを行った。 CAMTAの農業指導員の協力を得て、実証実験の対象コミュニティー・ジョアロボの調査と実証実験のために植えた胡椒の苗木の生育状況について現地調査を実施した。また、CAMTAの農業指導方法に基づき実験農場を開設し、着実に農業生産高を上げ、所得向上が実現しつつあるノバベッテル農民コミュニティーの会員をCAMTA農業指導員と共に訪問し、農業生産向上の実態を調査した結果、ノバベッテル農民コミュニティーの会員が、CAMTAの農業指導員の指導の下に樹木を育てながら継続的な収穫が得られる農業生産活動を行う実験農場を開設し、小農民でも生産拡大による所得向上が得られる農業生産方法が実現しつつあることが、今回調査で判明した。この会員の実験農場で実施している農業生産活動の方式が小農民の貧困改善に効果的であると判断し、平成26年、27年度における研究対象、及び実証実験の場として採択し研究を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き研究を継続して行った。現地調査を実施(平成26年8月):平成25年度で選定した研究対象地域のトメアス移住地と周辺農民コミュニティー及びコミュニティーを形成する小農民を訪問し、アグロフォレストリー農法導入による農業生産の状況、トメアス農業協同組合(CAMTA)の農業指導員による農業指導の実態と指導による成果の状況、所得改善の状況、アグロフォレストリー農法の導入状況、農民コミュニティーにおける諸問題等について調査を行い研究成果としてまとめた。 実証実験の継続:平成25年度に選定した実証実験対象のジョアロボ小農民コミュニティーに配布した800本の胡椒苗の生育状況について現地調査を行った。胡椒苗による実証実験はCAMTAの農業指導員の指導の下に推進している。現地では苗の移植後2年目に入り順調に生育しつつあることが分かった。苗の栽培地はコミュニティー内の農場の2か所で実証実験を行っている。 研究対象コミュニティー及び小農民の追加:CAMTAの農業指導員の下にアグロフォレストリー農法による試行農場を開設し、継続的な農業生産活動により農業生産高を上げ、所得向上を果たし貧困改善が進みつつあるノバベッテルの小農民(モーリシュ氏)を模範事例として研究対象に追加した。 ブラジル国内の他日本人移住地および日系人社会の調査:日系人と地域の農民の連携事例について調査を行うため、小規模日本人移住地のサンタカタリーナ州ラーモス移住地、日系人が多く集まり日系人社会を形成しているサンパウロ市の近郷のイトゥ市日系人社会を訪問し農業生産等による地域との連携の実態について聞き取り調査を実施した。 調査結果および課題の考察:現地調査結果を踏まえ研究目的と研究計画に沿って研究推進と考察を行った。平成26年度の研究目的及び研究計画に述べている事項についてほぼ達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、平成25年度及び平成26年度で選定した研究対象地域及び研究対象実験農場において、アグロフォレストリー農法を導入した試行モデルによる農業生産活動について実証実験を継続し、貧困家族の所得向上を直接実現する貧困軽減戦略としての適用性の評価を行い、新しい貧困軽減戦略について考察し、研究成果としてまとめる。また、実証実験を通して得られた小規模農民コミュニティーの活動内容の分析を行い、貧困改善の手法に効果的なコミュニティーのあり方、農業生産活動の支援を行う日本人移住地の団体組織(トメアス農業協同組合及びトメアス文化農業振興協会)の連携の在り方、農業指導員による農業指導の在り方とコミュニティー会員の指導の受け方等について考察を行い、小規模農民コミュニティーの貧困軽減に向けた体制、ルール等について考察を行いまとめる。 小規模農民の農業生産支援を行う日系人団体組織の農業指導の内容、農業指導の在り方、農業指導員の養成方法、農業支援の内容等について究明し、貧困改善に効果的な農業支援策について取りまとめる。 また、アグロフォレストリー農法の普及に関して、協力企業との連携、普及に関わるセミナー等の開催に、トメアス文化農業振興協会が関与していることが平成26年度の調査で判明したので、その連携と活動内容等について考察を行う。 日系人団体組織と農業指導員が小規模農民に推奨するアグロフォレストリー農法について、導入の実態とどのようにして農業生産の向上と所得向上をもたらしているかを究明する。これまで行ってきた実証実験及び小規模コミュニティーの活動、日系人団体組織による農業支援、アグロフォレストリー農法による小規模農民コミュニティーにおける農業生産高の向上と小農民家族の所得向上をもたらしている状況等を分析し、新しい貧困改善手法を取りまとめ提言を行う。また、研究成果として発表する予定である。
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