2013 Fiscal Year Research-status Report
マンガ/コミックの「読者共同体」に関する日米比較による実証的アプローチ
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25380714
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
瓜生 吉則 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (40513205)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マンガ/コミック / ファン・カルチャー / 読者共同体 / 文化産業 |
Research Abstract |
日本とアメリカの「マンガ読者共同体」を実証的に比較検討するという目的のもと、平成25年度はアメリカのコミックの歴史や産業構造、「ファンダム」と呼ばれる愛好者集団についての文献を重点的に渉猟し、調査研究のベースとなるアメリカン・コミックの状況把握に努めるとともに、<大衆文化>における作り手と送り手との関係に関連した文献についても調査を進めた。 平成25年10月上旬には、ニューヨークで開催された「ニューヨーク・コミコン」への視察を行い、アメリカのコミック愛好者たちとコミックの作り手との関係を実地調査した。また、アメリカのコミックコンベンションとの比較を行うため、同年12月には東京・有明で開催された「コミック・マーケット」への視察も行った。これらの視察の結果、日本とアメリカとでは「ファン」による行動に大きな違いが見られることが分かった。同人誌を作成し、二次創作と呼ばれる「オリジナル」に刺激を受けた創作活動(二次的とはいえ、「作り手」となること)に日本のファンが向かう傾向が少なからず見られるのに対し、アメリカではコンベンション形式の場所では、同じコミックの「作り手」になることよりも、サイン会やワークショップへの参加など、「作り手/受け手」の差異を敢えて越境せず、「受け手(消費者)」としての様々なコミックへの関わり方に重点を置いている。 「マンガ/コミック」という、類似の表現構造を持つ娯楽であっても、それが置かれた歴史的・社会的状況に愛好者の行動様式は多分に影響されており、特に著作権をめぐる状況やコミック産業の歴史の特殊性に拠っていることが判明したことは、今年度の調査研究の大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本とアメリカ双方の大規模なマンガ/コミックのコンベンションへの視察旅行ができたことにより、特にアメリカにおけるコミックを取り巻く状況とそれに対するファンの行動の実態をつかむことができたことは大きな収穫であった。また、アメリカのコミックや文化についての文献収集および調査も順調に進んでおり、平成26年度以降の日米比較に向けての準備もおおむね予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
マンガ/コミックの「読者共同体」の日米比較という研究目的に向かって、今後は日本の「読者共同体」をめぐる調査研究を進め、最終年度での総括に向けて、比較検討における実証性を高めるための素材を着実に獲得していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ノートパソコンの購入金額が当初の予定よりも低かったため。 日本のマンガ読者共同体の実態に関連する文献、および活字媒体が編制する読者共同体について理論的に検討するための文献の購入、および夏と冬に開催される「コミックマーケット」への視察旅行に研究費を充て、研究がさらに進捗するように努める。
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Research Products
(1 results)