2013 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害者への相談支援における文化モデルアプローチの研究
Project/Area Number |
25380811
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
原 順子 四天王寺大学, 人文社会学部, 教授 (60309359)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / 障害者福祉 / 聴覚障害者 / ソーシャルワーク / ろう文化 / 文化モデルアプローチ |
Research Abstract |
本研究は、聴覚障害者への相談支援における支援モデルとして、聴覚障害者のろう文化を基盤としたストレングス視点に基づくアプローチとして「文化モデルアプローチ」が有効であることを実証し、且つ、理論化することを目的としている。研究方法としては、聴覚障害ソーシャルワーカー(海外を含む)への質的・量的調査を実施し、主流文化である聴文化に対するろう文化の有り様を考察する。初年度の研究としては、以下の3領域について研究を実施した。 1.「ろう文化」に関する研究:聴覚障害者独自の「ろう文化」とは何か、国による違いがあるのか等、「ろう文化」の実態を明確にするために、まず国内外の先行研究のレビューをおこなった。わが国では「ろう文化」に関する理解が進まない状況があるが、研究レベルにおいては国内においても「ろう文化」に関する研究がみられ、海外の先行研究もあわせて、まず「ろう文化」の構成要素を抽出することができた。 2.日本の聴覚障害ソーシャルワーカーへの調査研究: 「文化モデルアプローチ」の理論的構築をおこなうため、聴覚障害ソーシャルワーカーを対象にインタビュー調査を実施し、分析を始めた。数名の調査を終えている。 3.諸外国の聴覚障害ソーシャルワーカーへの調査研究:韓国の「ろう文化」に関する専門職者の認識と韓国内での聴覚障害者への支援の実態を調査するために、韓国を訪問した。当初の計画ではアメリカでの調査をはじめにおこなう予定であったが、日本の状況に近いと予想される韓国の状況をまずはじめに調査する意義を考え計画を変更した。具体的には、聴覚障害者への支援の実態と、「ろう文化」や「文化モデルアプローチ」について、聴覚障害ソーシャルワーカーにインタビュー調査をおこなった。その結果、韓国においては「ろう文化」に対する拒否感はないが、何よりも「ろう文化」という概念がわが国のようには周知されていないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間内の達成課題として、以下に示す4点を計画している。 1.聴覚障害者の独自の文化であるといわれる「ろう文化」の実態、デフコミュニティおよび聴者社会での認知度を調査により明確にする。2.ろう文化視点に基づく「文化モデルアプローチ」が有効であることを、聴覚障害者を対象に相談支援をおこなっているソーシャルワーカーの相談内容から明らかにする。3.ろう文化に対する認知度は国によって違うが、障害学研究が進んでいるアメリカとイギリスを中心にその実態を調査し、日本との相違点を明らかにする。4.「文化モデルアプローチ」による介入で、ストレングス視点の介入が可能となることを理論的に明確化する。 平成25年度の研究計画は若干内容を修正しているが、「研究実績の概要」に示すとおり、おおむね順調に研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降の研究計画は以下のとおりである 1.「ろう文化」に関する研究:平成25年度に引き続き、先行研究をレビューし研究を継続していく。 2.日本の聴覚障害ソーシャルワーカーへの調査研究:平成25年度に引き続き、調査研究を継続していく。 3.諸外国の聴覚障害ソーシャルワーカーへの調査研究:平成25年度の韓国での調査研究と同様に、アメリカ・イギリスの聴覚障害ソーシャルワーカーを対象に、「ろう文化」や「文化モデルアプローチ」についてインタビュー調査をおこなう。聴覚障害者のソーシャルワーカーと聴者のソーシャルワーカーとの相違点についても、インタビュー調査を実施し比較研究をおこなう。 4.聴覚障害者を対象に相談支援をおこなっている相談員への調査研究:わが国には聴覚障害者への相談支援をおこなっている「ろうあ者相談員」「聴覚障害者相談員」など、さまざまな呼称で表現される相談員が全国に約230名いる。しかし、国家資格を取得している者は非常に少なく、その専門性には疑問が投げかけられている。これらの相談員を対象に量的調査をおこない、その実態を浮き彫りにすることで、国家資格有資格者との差異を明らかにし、「文化モデルアプローチ」の理論化への検証をおこなう。 5.以上の研究結果を論文・学会発表等で公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
諸外国の調査として、アメリカの聴覚障害者に関わる専門職団体であるADARAが開催する研究大会(平成25年4月)への出席と、聴覚障害ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を実施する予定であったが、本研究の採択結果がでた後に訪問を計画するには準備期間が十分ではなかったため、アメリカへの訪問ができなかった。その代わりに韓国への調査を実施したが、訪問日数が短かく、調査にかかる費用が予定より少額で済んだため、結果として次年度使用額が生じた。 次年度には当初の予定であるイギリスに加えて、アメリカへの訪問を計画している。
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Research Products
(3 results)