2013 Fiscal Year Research-status Report
中等学校教育課程における武術導入に関する研究 -戦前期の弓道を中心として-
Project/Area Number |
25381008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
佐藤 環 茨城大学, 教育学部, 教授 (50280136)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 戦前・戦中期の中等学校教育課程 / 武術教育 / 弓道教育史 / 本多利実 |
Research Abstract |
昭和戦前・戦中期までの中等学校教育課程には比較的早くから剣術(剣道)や柔術(柔道)が導入されていったが、弓道(弓術)は昭和に入り特に高等女学校の課業として導入される傾向が見られた。本研究は、明治期から昭和戦前・戦中期にかけての中等学校において、弓道(弓術)が正科として教育課程に導入される過程を明らかにしようとするものである。そのプロセスを、射法改革により中等・高等教育機関に弓道を普及させるのに貢献した本多利実翁と彼が創始した本多流の影響、明治20年代以降に盛んとなった中等学校教育課程正科として武道を導入しようとする運動のなかにおける弓道界の動向、弓道を教育課程に位置づけた中等学校における弓道教育の運用実態、の3点に着目して考察しようとする。 平成25年度には本研究目的を遂行する基礎作業として、近代日本の中高等教育機関における弓道教育導入に大きな影響を与えた本多利実および本多流に関する資料収集、そして可能ならば東京府や茨城県を中心とした中等学校教育課程への弓道導入に関する資料収集を行うことを予定した。 まず本多利実と本多流弓術成立の資料収集では、国立国会図書館、東京藝術大学、財団法人生弓会で史料収集を行い、且つ参考文献の悉皆収集に努めた。次に東京府および茨城県の中等学校における弓道関係資料を、国立公文書館、国立公文書館、東京都公文書館で収集した。 これらの資料から、中等学校のなかでは昭和戦中期の中等学校令施行後に高等女学校で弓道を導入するものが多いことが判明し、導入された弓道の流派は小笠原流や本多流が多くを占め、武射の日置流は殆ど見られないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の研究計画では本研究遂行のための基礎作業として、まず本多利実と本多流弓術成立の資料収集では国立国会図書館、東京藝術大学、財団法人生弓会で史料や参考文献の悉皆収集、次に東京府および茨城県の中等学校における弓道関係資料を国立公文書館、国立公文書館、東京都公文書館を中心として収集に努めた。 東京府の中学校、高等女学校、実業学校、各種学校、師範学校といった中等学校学事資料や学校沿革誌などにより、中等教育課程への弓道導入の基本資料が整いつつある。また、東京府や茨城県の高等女学校の学校沿革誌、学校台帳、学規・学則関係文書等により弓道場竣工(東京府立第七高等女学校・同第八高等女学校)や教育課程に弓道を位置づける(茨城県立水戸高等女学校)など弓道教育導入実態がわかる資料を収集できた。よって、平成25年度における所期の目的は概ね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画は、主として昭和初年の中等学校教育課程へ弓道を位置づけようとする弓道界の働きかけに関する史的研究のため、帝国議会審議過程および中等学校の学校体操教授要目改正の史的意義について考究しようとする。 そのため、昭和9年から開かれた大日本武徳会の弓道射形統一委員会資料、昭和10年の第67回帝国議会審議資料や学校体操教授要目関係資料を収集するとともに、平成25年度に収集した各種資料を基礎として東京府中等学校と茨城県高等女学校の教育課程における弓道導入過程のデータベース化を行う。前者は中等学校教育に流派ごとに異なる射法を持ち込むことは難しく射法を統一しなければならない課題への対応を明らかにする必要があるため、後者は中等学校の弓道教育導入の実態に関する事例研究としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては、国際武道大学弓道研究室にある本多流弓術および戦前期中等学校弓道関係の資料複写とそれら資料に関する聞き取り調査への謝金を計上していたが、聞き取りに行くことができず4万円強の当該助成金が生じた。 平成26年度使用計画では充実した弓道資料の蓄積がなされている国際武道大学弓道研究室(千葉県勝浦市)へ資料収集・聞き取り調査を予定しているが、資料が多いため複数回の訪問になることが予想される。よって当該助成金は、平成26年度使用計画のなかの旅費および人件費・謝金として繰り込み、本多流射法成立と各流派で異なる射法統一の動きを明らかにし中等学校における弓道教育導入過程研究の進展を図る。
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