2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化物ナノチューブとグラフェンの複合化と光電気化学によるキャラクタリゼーション
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25390021
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
坂東 俊治 名城大学, 理工学部, 教授 (20231540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化物 / ナノチューブ / 光電変換 / 太陽電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゾル・ゲル法で作製した酸化鉄ナノチューブのバンドギャップを,Taucプロット法により決定した.作製した試料のバンドギャップは2.7eVであったが,原子欠陥等に由来する歪を熱処理で緩和することにより2.3eVまで下げることができた.また,ナノチューブ構造は,280℃まで安定であった.さらに,Feの一部をZnに置換した試料では,Zn/Fe=0.1のとき,バンドギャップが2.0eVまで低下することを確認した. そこで,酸化鉄ナノチューブ,および,Znドープ酸化鉄ナノチューブ(Zn/Fe=0.1)を電子移送層,および,光吸収層として有機ペロブスカイトと複合化したもの,さらに,正孔移送層にはP3HTを用いた.このようにして FTO(-)/酸化鉄/酸化鉄ナノチューブ(Znドープ酸化鉄ナノチューブ)・有機ペロブスカイト/P3HT/Au(+)の構造を持つ光電変換セルを試作し,分光感度特性を評価した. 最初に電子移送層および光吸収層としての基礎特性を調べるため,正孔移送層を持たない光電変換セルの特性を評価した.その結果,酸化鉄ナノチューブを用いると,酸化鉄ナノ粒子を用いた場合より,450nm以上の波長領域で高い分光感度を示すことがわかった.ナノチューブ化することにより,バンドギャップが狭くなり,長波長領域まで有効に光エネルギーが吸収できることを示している.また,450nm以下の短波長領域では,酸化鉄ナノチューブの場合,分光感度が低下してくるのに対し,Znドープ酸化鉄ナノチューブではそのような低下は認められなかった.Znをドープしたことにより,LUMOレベルに幅が生じた結果である.次に,正孔移送を行うP3HT層をもつ光電変換セルの特性を調べた結果,酸化鉄ナノチューブの方がZnドープ酸化鉄ナノチューブよりも全波長領域(390-710nm)で2倍以上高い分光感度特性を示した.これは各層のHOMOレベルのミスマッチによるものと考えられ,今後,正極と負極を入れ替えた構成を考え,改善する計画である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化鉄をベースとしたナノチューブ試料に対して,熱やZnドープに対する構造安定性を調べ,光電変換セルを作製する際に必要となる熱処理の上限温度を決定することができた.また,Znドープ酸化鉄ナノチューブの光学的バンドギャップのZnドープ量依存性を,確定することができた.これらの結果は,学術雑誌 J. Inorg. Organomet. Polym. に発表した. このように本研究の基盤材料となるZnドープ酸化鉄ナノチューブに関する基礎的な特性評価を終え,固体電荷分離物質であるハロゲン化鉛有機ペロブスカイとP3HTとの積層構造型光電変換セルをFTO電極上に作製し,分光感度特性の評価を行っており,ほぼ予定通りの計画遂行状況である.しかし,得られた結果は決して満足できるものではなく,エネルギーレベルのマッチングを考慮したうえで光電変換セルの正極と負極を入れ変える実験を遂行する.また,電極材料としてカーボンナノチューブを用いることも計画に入っているため,塩化鉄を触媒とし,メラミン樹脂を炭素と窒素の供給源とする新たな窒素ドープ型多層カーボンナノチューブ作製実験も開始した.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,FTO電極上にFe(Ⅲ)アセチルアセトナートをスピンコートし,熱処理することにより緻密酸化鉄層(電子ブロック層)を作製している.その上に酸化鉄ナノチューブおよびZnドープ酸化鉄ナノチューブをアセチルアセトンと混錬することによりペースト状にして,スピンコートまたはスキージ法により均一な多孔質層を作製している.しかし,粘度調整や焼成温度等に問題があり,ひび割れが入った多孔質層となっている.このため,有機ペロブスカイトが緻密層に直接接合している部分があり,光電変換効率を低下させる原因の一つとなっている. 今までのところ,太陽光変換効率が1%程度の光電変換セルしか得られておらず,多孔質層の均一化,および,酸化物ナノチューブと有機ペロブスカイトやP3HT,正負電極とのエネルギーレベルマッチングを考え直す必要がある.現在,光を照射するFTO電極側が負極となるようなエネルギーレベルマッチングを考えて実験を実施しており,電子移送層である酸化鉄ナノチューブ多孔質層の不均一性により,低い光電変換効率しか得られないものと考え,この問題点を回避する方策を試みる. そこで,多孔質層の不均一性が光電変換効率の律速になりにくく,かつ,エネルギーレベルマッチングの改善も期待できるFTO電極側が正極になるような層状構造をもつ光電変換セルの試作,評価を行う.具体的にはFTO(+)/P3HT/有機ペロブスカイト/酸化鉄ナノチューブ(Znドープ酸化鉄ナノチューブ)/Ag(-)として,各層間のエネルギーレベルのマッチング,および,有機ペロブスカイト層からナノチューブ層へ緩やかに変化する拡散接合を,スピンコート法を用いて行い,Ag電極へと接合する.このようにして作製した光電変換セルの分光感度特性,光電変換効率を評価する.また,Ag電極のフェルミ準位は-4.3eVであり,ナノチューブのフェルミ準位-4.5eVと近く,正極をナノチューブ電極へ置き換えた実験も行う.
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Causes of Carryover |
国外旅費として計上していた予算を研究の進展状況により取りやめ,次年度に行うことにした.その分の予算を円滑な実験計画遂行のために謝金,実験消耗品購入に充て,集中的なデータ取得を行った.そのための余剰金として,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用は実験消耗品の購入に充てる.
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Research Products
(4 results)