2013 Fiscal Year Research-status Report
透過電子顕微鏡法による金属有機構造体およびその分子内包複合構造の構造解析
Project/Area Number |
25390023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
劉 崢 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 主任研究員 (80333904)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 金属有機構造体 / 構造解析 |
Research Abstract |
電子顕微鏡法による金属有機構造体(MOF)およびMOF空隙中に分子を内包した複合構造の構造解析を行うためには、電子線ダメージに対する対処法の確立が必要です。平成25年度では、研究協力者から提供されたいくつかのMOF試料を用い、電子線ダメージを低減し、かつ必要な空間分解能を得るための最適なTEM観察条件を明らかにしました。具体的には、総電子線量あるいは照射電流密度を同一の条件の下で、加速電圧を60kVもしくは120kVと変えながら、MOF材料の電子回折強度の経時変化を利用して、MOF材料の電子線ダメージの多寡を調べました。またさらに、有機系材料に有効と言われる試料冷却について、MOFへの有効性を検証しました。その結果、MOF材料を構成する有機基と金属錯体の種類の違いにより、加速電圧による電子線ダメージが異なることが分かりました。例えばNi-CAT-1 [Ni3(HHTP)(H2O)12]の場合、120kVより60kVのほうが電子線ダメージの方が顕著ですが、HKUST-1 ([Cu3(TMA)2(H2O)3]n ) の場合、120kVより60kVのほうが電子線ダメージは小さい結果となりました。また、いずれのMOF材料においても、マイナス120度に冷やすことで電子線ダメージが低減することが分かりました。すなわち、試料冷却はMOF材料の電子線ダメージの低減に有効であることが明らかとなりました。 暗視野STEM法を用いると、より重い元素(ここでは金属原子)が明るく見えることから、より直感的に原子構造を調べることができ、MOF材料の構造解析にきわめて有用と考えられます。しかしSTEM法はTEM法よりも試料に照射する電流密度が高いため、通常の観察条件では電子線ダメージが大きく、構造解析に足る像を得る事は極めて困難です。そこで、同じ加速電圧の条件の時、より早く電子線をスキャンし、複数画像によるノイズ低減処理を行うことで、MOF材料の観察と元素分析が可能であることを見いだしました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通りに進捗しており、上述成果に示す通り平成25年度分の達成度は100%と言えます。その研究成果は顕微鏡学会第57回シンポジウムのポスターセッションで発表しました。また、共著論文としてChem. Commun., 49, 11686-11688,(2013).に掲載されました。さらにいくつかの成果について、論文投稿準備中の段階にあります。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の成果を基に、さらに多様な有機基と金属錯体の構造から構成されたMOF材料の構造解析を遂行します。特に、新規に合成された未知構造の決定、欠陥等を含む複雑な構造の解析、さらには結晶終端構造(金属原子かカーボン原子か有機原子か)の解析など、極めて困難な課題に挑戦します。また、高分解能像シミュレーションや電子エネルギー損失分光法などを併用して、より詳細な構造・状態解析の可能性を探る予定です。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はMOF材料の最適な観察条件を決めることに注力したため、MOF試料の提供者である海外在住の研究協力者との研究打ち合わせのための外国出張は省くことができ、そのための外国旅費を使用せずに済みました。 翌年度は新規MOF材料の構造解析等の実施において必要となる海外研究者との密接な連携のため、外国出張による研究打ち合わせを行う予定です。よって次年度使用額40万円と合わせて、翌年度は外国旅費として70万円を使用する予定です。
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Research Products
(2 results)