2017 Fiscal Year Research-status Report
非超楕円曲線からなるペンシルを持つ代数曲面に関する研究
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25400058
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
高橋 知邦 一関工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (50259793)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 代数曲面 / ファイバー空間 / 射影空間束 / 堀川指数 / 相対標準写像 / 変形族 |
Outline of Annual Research Achievements |
29年度は主として以下の3つのテーマについて研究を行った。(1)楕円曲線上の種数が3の曲線を一般ファイバーとするファイバー空間の構造を持つ曲面の変形族を構成するための準備として、楕円曲線上の射影平面束の変形族を構成する。(2)楕円曲線上の局所的に自明なファイバー空間でファイバーが平面曲線であるようなものをもつある種の曲面の構造を調べる。(3)一般ファイバーが種数が4、階数が3であるような非特異射影曲線上のファイバー空間の構造を持つ曲面の曲面の構造について調べる。 (1)については変形族の構成をするために必要な各射影平面束の同型類の正則接束のコホモロジー群の次元の計算は、射影平面束の開集合の張り合わせのデータを用いることにより完全に解いた。一方、変形族の構成は部分的にしか解決しなかった。しかし、主要なところは解けているということで、論文にまとめて投稿し、受理された。すでに出版済みである。 (2)については各射影平面束の同型類について正因子の代数的同値類からなるモノイドの生成元を確定し、さらにその生成元の整数倍と代数的同値である既約かつ非特異な正因子の構造について詳しい構造を知ることができた。投稿論文に対する査読レポートに従って修正し、再投稿中である。 (3)については、退化ファイバーの堀川指数を確定する問題について論文にする予定であったものが、解決する前に他の研究者によって結果が得られるという事態になった。そこで、その結果を用いた関連するた問題として、乗法写像が全射にならない場合の堀川指数の下限の問題について着手した。これについてもほぼ証明ができている。さらに、堀川指数がその下限に等しくなるような曲面の例を2種類構成し、その詳しい構造について解析することができた。今年度の上半期中に論文にまとめ、投稿できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
楕円曲線上の射影平面束の変形族の構成の問題は部分的にではあるが、解決し、論文が査読付きのジャーナルに出版済みである。次になすべきは、残った射影平面束の同型類について変形族を構成することであるが、構成の方法については見通しが立ってる。問題となるのは変形族の中でどの方向に変形したものがどの射影平面束の同型類になるのかということを確定することである。バンドルの変換関数を助変数付けすることにより、変形族を構成しており、その変換関数が複雑であるため、難しいところがないわけではないが、アティヤによる楕円曲線上のベクトル束の分類理論をもう一度検証することにより解決できる見込みである。また、この結果を用いた曲面の変形族の構成の問題については、足利‐今野によるカステルヌオヴォ曲面の場合を参照しつつ進めている。 楕円曲線上の射影平面束の各同型類の正因子の代数的同値類からなるモノイドの生成元の整数倍と代数的同値である曲面の詳しい構造に関する定理については結果を得ることができた。投稿論文に対してジャーナルの編集部から返事があり、査読者から多くのコメントをいただいた。このコメントに従って行っていた修正が完了し、再投稿中である。 非特異射影曲線上の種数が4階数が3の非超楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間の構造を持つ代数曲面に対しては、そのファイバー空間に対する乗法写像が全射でないという仮定の下で、堀川指数の下限を求めるという問題に着手した。榎園誠氏が種数が4、階数が3である非超楕円曲線を一般ファイバーとする非特異射影曲線上のファイバー空間における堀川指数の問題を解決した。我々はこの結果を用いて我々の問題に着手した。証明はほとんどできている。また、乗法写像が全射でなくかつ堀川指数が下限に等しい曲面の例を2種類構成し、その詳しい構造についても結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、現在着手している問題について残っている細かい問題を完全に解決し、できるだけ早期に論文を投稿または再投稿する。 次に、もう一つ着手している問題として、非特異射影曲線上の種数が4階数が4であるような非超楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間の構造を持つ代数曲面で、堀川指数の総和が2分の1に等しいものの変形族を構成するというものがある。このような曲面は相対標準写像によりある性質を持つ3次元射影空間束の中へ移され、像の上へ双有理であるという性質を持つ。そして、その相対標準像を含む相対2次超曲面が存在し、その構造もつかめている。そのような相対2次超曲面は特異ファイバーを2個持つ場合と1個持つ場合の2種類に分けられる。1個のみ持つ場合はその相対2次超曲面に対してある種の双有理変換を施すことにより、底曲線上の2つの線織面のファイバー積になる、という性質があるため、より詳しい構造を調べることができる。また、変形族の構成も見通しが立てやすい。しかし、特異ファイバーが2個ある場合はその相対2次超曲面自体が非特異であるにもかかわらず、構造についてあまり詳しいところまではまだわかっていない。 我々の目標は曲面の相対標準像を含む相対2次超曲面が2個の特異ファイバーを持つ場合から1個しか持たない場合への曲面の変形が構成できるかどうかを調べることである。高次元の代数多様体の分類理論等の文献をできるだけ多く調べ、解決のための方策を見つけていきたい。 更なる問題として、非特異射影曲線上の種数が5、ゴナリティが3の非超楕円曲線を一般ファイバーとするファイバー空間の構造を持つ曲面のそのファイバー空間に関する勾配の下限を求める、ということにも着手していきたい。勾配に関する様々な文献があるので、できる限り多く調べ、解決のための方策を練っていく。
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Causes of Carryover |
本研究において着手していた問題はいくつかあり、29年度はそのうちのある種の問題について主に着手していた。ほぼ解決しており、2016年に広島大で開催された研究集会において部分的な結果として発表をした。さらに議論を進め、未解決部分を解決してから再度研究集会で報告する予定で準備をしていた。ところが、他のある研究者も同様の問題に着手していて、我々よりも先に完全な結果を得るという事態になった。このため、我々が発表をするという機会を失うこととなった。このことが未使用額が生じた主たる理由である。 もう一つの理由としては、東北大(仙台)への出張が近郊旅行の扱いに変更になったということが挙げられる。我々は当初、仙台への出張の旅費について従来通り支払われる、ということで旅費について計画を立てていたのだが、2016年度から上記の様な扱いとなり、出張1回あたり7,000円程度の減額となった。東北大へは毎年多くの回数出かけており、総額でかなりの額を余らせるということになった。
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