2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大山 陽介 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (10221839)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パンルヴェ方程式 / 漸近解析 / q-差分方程式 |
Research Abstract |
第6q-パンルヴェ方程式の構造を調べるために、対応するq-差分線型方程式の大域構造を調べた。q-差分線型方程式に関しては、バーコフによって拡張されたリーマン・ヒルベルト対応が知られていたが、その対応関係をより精密化することで、q-差分線型方程式の接続係数からモノドロミ・不変量を取り出すことに成功した。q-差分方程式の場合、接続係数が楕円函数になるため、一般には不変量を得るのは簡単ではないが、第6q-パンルヴェ方程式の場合は、その特殊性を利用して、3つの不変量を構成できる。この不変量は代数的には独立ではなく、関係式を一つ持っており、実質的に2次元になるが、この曲面が第6q-パンルヴェ方程式の解空間になる(正確には、その解析的表現になる)。この成果は、q-差分線型方程式の大域構造のみならず、q-パンルヴェ方程式の大域解析に大きく役立つものと考えている。以上は、トゥ―ルーズでの共同研究に基づいている。 後半には、パンルヴェ方程式が定義する曲面族を考察した。一般にソリトン方程式の場合には、ラックス対が与えられると、対応して空間曲面を構成することが出来る。ソリトン解の場合などは具体的に曲面を描画できるが、パンルヴェ方程式の場合はそれが特殊解であっても波動函数を求めないことには曲面を描くのは数値的以上には無理であった。モントリオールでの共同研究によって、パンルヴェ方程式の有理解の場合は波動函数が合流超幾何函数で表示できることから、曲面を厳密に構成できることが解った。この研究は現在も展開中であり、第2から第6まで全ての場合に同様のことができると期待されるが、まだ第2,第3にとどまっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「第1から第6まですべてのパンルヴェ方程式の漸近展開の完全なリストを作る」という当初の最大の目的からは、ややはずれてしまったので、本来の研究目的からは遅れてしまっている。しかし、当初は見当もつかなったq-パンルヴェ方程式の解空間の解析的表示が得られたため、差分の方は大きく進んだ。その点で両者の差を考えて「やや遅れている」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究目的とはややずれているが、残り2年の研究目標としては、全てのq-パンルヴェ方程式に対して、その解空間の解析的表現を構成することを主目的としたい。そのためには、パンルヴェ以前にq-超幾何方程式の大域問題を完全に決定する必要がある。この方面は、申請者の学生である森田が主体にやっており、もう少しで完成するところである。森田の研究を完全には待てないので、第2,第5q-パンルヴェ方程式など、できるところから仕上げていきたい。退化構造が簡単な第5はともかく、第2q-パンルヴェ方程式の場合には、q-ストークス現象の理解が十分でないので、その点が障害になるかもしれない。いずれにしても、q-パンルヴェ方程式の漸近解析を行うに当っては必要な理論になる。 他方で、パンルヴェ方程式が定義する曲面族については、まだ第2,第3くらいしか考察していないので、全ての場合に拡張したい。実際にはあまりきれいな曲面が出てこないが、上手にパラメータを選べればと考えている。差分の場合は、波動函数の計算が終わっていないので、この点でもq-超幾何方程式の整備が必要になってくると思われる。しかしながら、申請前と比べて、q-超幾何方程式系じたいの理解が大きく進んできており、波動函数じたいを完全にq-超幾何函数で表示することも可能であろう。q-パンルヴェ方程式に関しては、基本的な理論でも抜けが多いので、この機会に整備したい。 また、第6-パンルヴェ方程式の漸近解析に関しては、共形場理論との関係がここ1年半ほどで大きく展開されており、この分野を大きく変えるものになるはずである。たいへん重要な研究であるので、今後、パンルヴェ方程式の固定特異点の周りのべき級数的漸近解析を調べていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度途中に、q-パンルヴェ方程式の大域解析や、曲面論との関係が新たに進展したため、研究計画を一部立て直すことになった。そのために、昨年度は準備期間として翌年度に一部を繰り越しすることで、修正した研究計画を発展させていくことにした。 また、第6-パンルヴェ方程式の漸近展開が共形場理論を使って記述されることが最近分った。この分野を大きく変えるものになるはずである。申請時には明らかでなかった研究であり、研究状況が大きく変わりつつあるため、この方向の研究にあらためて備える。 繰り越しした助成金で、トゥールーズの研究グループとの研究打ち合わせを中心に、海外の研究者との研究交流をもつ予定である。また、パンルヴェ方程式の漸近展開が共形場理論との関係を明らかにしたLissovy氏を日本に招へいするさいの滞在費にも使う。約30万円を分けて、Lissovy氏の日本滞在と、申請者のフランス滞在費にあてる計画である。
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Research Products
(5 results)