2014 Fiscal Year Research-status Report
多変数超幾何関数の計算複素解析と数式処理を用いた公式の導出
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25400132
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小原 功任 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (00313635)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 複素解析 / 超幾何関数 / 数式処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究目的は、多変数超幾何関数について、新しい関数等式を導出することである。具体的には、多変数超幾何関数の局所的性質(微分方程式・差分方程式) を利用して、関数等式の組織的探索を行うことである。また関数等式の一種であるパラメータつき変換公式について、どのような場合に変換公式が存在するのか、理論的に解明していく。これらの探索は数式処理システム上に専用のソフトウェアを実装することで行う。さらに先の目標は、より一般の多変数超幾何関数の新しい公式の発見である。より一般の多変数超幾何関数やホロノミック関数についてもアペル・ロリチェラと同様の公式が成立することが期待でき、それらを系統的に理解していくのも長期的な目標である。 数式処理システム Risa/Asir 上において作成した探索プログラムを、今年度は改良し高速化した。探索プログラムの高速化によって、探索範囲が大幅に拡大できるようになった。このプログラムは、与えられた自由変数をパラメータに線形に含む超幾何微分差分方程式の組について、(1)そのグレブナー基底と差分パッフィアン方程式を導出する、(2)差分パッフィアンの比較から自由変数を消去し、多項式イデアルをみつける、(3)多項式イデアルの準素イデアル分解を通して、変換公式と同値な代数多様体を得る、という手順を自動的に実行するものである。 今年度は、特にガウス超幾何関数について、有理変換公式に現れる有理数の分母が4までの場合の公式を全て調べあげた。この結果について、研究集会で発表を行った。また、本研究課題を遂行する上で開発した数式処理プログラムや並列化手法の派生として、計算代数統計における最尤推定問題および期待値決定問題(多変数超幾何関数が現れる)についても結果を得た。特にA-超幾何多項式の特殊値をグレブナー基底を使わずに高速に計算する手法も新たに開発した。この結果についても研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、組織的探索により超幾何関数の関数等式の発見とその性質を明らかにすることであるが、今年度までの研究において、パラメータつき変換公式と同値な代数多様体を自動的に導出するためのプログラムを作成するなどしており、またガウス超幾何関数については、存在する場合は変換公式まで導出でき、与えられた探索範囲においては、原理的には全ての変換公式を列挙可能なアルゴリズムを与えるといった結果を得ており、また派生した結果も得るなどしている。さらにこれらの結果については、研究集会で発表を行なっている。以上のことより、研究がおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、組織的探索により超幾何関数の関数等式の発見とその性質を明らかにすることであるが、今年度までの研究において、差分的手法により関数等式と同値な代数多様体を導出する方法を確立するなどの結果が得られている。また、そのための計算機プログラムの高速化・効率化など、組織的に探索するために重要な改良も行った。今後の目標として、数学的にそれらの代数多様体のもつ本質的意味などを追求していくことが重要である。 さらに本研究課題を遂行する中で開発された数式処理プログラムや並列化手法によって、計算代数統計における諸問題(多変数超幾何関数が現れる)への応用と公式の導出が可能となってきた。さらに、有限次元線形作用素のスペクトル分解のための関数論的アルゴリズムの開発・プログラムの実装など、応用が広がっているので、その方向についても研究していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度は本研究課題の最終年度であり、特に研究成果を発表するなどのために、十分な国内旅費・外国旅費が必要である。そのため研究を円滑に実施するために、研究計画全体を考慮して、必要な費用は今年度分から支出することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、研究成果を発表するなどのための、国内旅費・外国旅費にあてる予定である。
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Research Products
(14 results)