2013 Fiscal Year Research-status Report
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25400196
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
緒方 秀教 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (50242037)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 代用電荷法 / 双極子法 / ポテンシャル / ラプラス方程式 / 境界値問題 / 等角写像 |
Research Abstract |
本研究は、科学技術計算におけるポテンシャル問題(ラプラス方程式の境界値問題)の数値解法である代用電荷法および双極子法の理論的・実験的研究を目的とする。 当該年度の研究目的は、双極子法の精度についての理論的・実験的検証である。代用電荷法は、ある領域のラプラス方程式の解に対し、問題領域外部に置いた仮想電荷のポテンシャルの重ねあわせで解を近似する。一方、双極子法では電荷の代わりに仮想的な双極子を問題領域外部に置き、それらの作るポテンシャルの重ね合わせで解を近似する。 双極子法では、代用電荷法と同様、双極子の配置の仕方が計算精度を大きく左右し、双極子の配置法が重要な問題となる。円板領域問題の場合、代用電荷法も双極子法も、円板の同心円の等間隔点に電荷または双極子を置くのがよく、実際、その配置が近似解の指数関数的収束を与えることが理論的に示されている。 問題なのが円板領域以外の領域の場合である。代用電荷法では、円板から問題領域への等角写像により円板の同心円上の等間隔点をもとの問題領域の外部に写し、これらの点に電荷を置くのがよいことが、理論的にわかっている。そこで、双極子法でもこのような点配置、すなわち、円周上の等間隔点を等角写像により問題領域外部に写した点に双極子を置くのが有効であると予想した。そして、楕円内部領域のポテンシャル問題に対し数値実験により検証した結果、この双極子点配置の方法が有効であることが確認できた。 この研究結果は、ふたつの国際会議および査読付き論文一本にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初掲げた当該年度の研究計画は次の二つである:(1)双極子法の理論的および実験的研究、(2)波動問題(ヘルムホルツ方程式)に対する代用電荷法の研究。 (1)について、双極子法で用いる仮想双極子の適切な配置法を解明することを主な研究計画に挙げ、等角写像を用いる配置法が良い精度を与えることを数値実験により示した。これにより、双極子法の研究計画の一部は実行できたと考える。一方で、双極子法の理論誤差評価は当初想像していたよりも難航し、満足な成果を挙げることができなかった。これは、当該研究の難易度に対する当初の見込みが甘かった故であり、研究計画を立てる上で反省すべき点である。また、双極子法が従来の代用電荷法に比べて優れている点を見つけるべきであったが、当該年度の研究でわかったことは双極子法は代用電荷法と比べて精度・計算量はあまり変わらない、つまり、代用電荷法より取り立てて優れている点は見つけられず、あまり面白くない結果となってしまった。 (2)については、まったく手つかずになってしまった。当初の研究計画に内容を盛り込み過ぎたとしか言えず、これもまた反省すべき点である。ポテンシャル問題に対する代用電荷法の知見が他の偏微分方程式に対してもどれだけ通用するかということから、興味のある研究課題であったが、研究実行能力がその関心に追いつかなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度の研究でやり残したこと、すなわち、「現在までの達成度」に記した、双極子法の理論誤差評価と波動問題に対する代用電荷法の研究を継続課題としたい。 当初の研究計画では、今後の研究計画として流体問題(ストークス流問題)および弾性問題に対する代用電荷法の有効性の検証を挙げているが、それらの問題の数学的基礎として、重調和問題に対する代用電荷法の有効性の検証を研究計画として考えている。重調和関数はグルサの表示により複素解析関数を持ちいて表すことができ、その意味でポテンシャル問題と関連性が深い。その観点から、ポテンシャル問題に対する代用電荷法に関する知見(理論誤差評価、有効な点配置)が、重調和問題にどれだけ通用するかについて検証したい。 さらに、当初の研究計画には挙げなかったが、複素解析関数に対する代用電荷法による近似も研究に加えたい。複素解析関数はその実部・虚部が調和関数すなわちラプラス方程式の解であることから、代用電荷法による関数近似が可能であり、実際、その観点から代用電荷法を用いた数値等角写像の研究が行われている。本研究では、ポテンシャル問題に対する研究結果を基に、複素解析関数近似に対する代用電荷法の有効性を検証し、解析接続など複素関数論における近似問題に対する代用電荷法の応用を考えている。
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Research Products
(4 results)