2013 Fiscal Year Research-status Report
KF添加チタン酸バリウムの大型単結晶育成と臨界点近傍物性の解明
Project/Area Number |
25400329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
秋重 幸邦 島根大学, 教育学部, 教授 (30150981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚田 真也 島根大学, 教育学部, 助教 (90570531)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チタン酸バリウム / 強誘電体 / 圧電体 / 臨界現象 / KF添加 / 単結晶 / セラミックス / 相転移 |
Research Abstract |
鉛フリーな圧電材料の開発の一環として、KF添加チタン酸バリウム (Ba1-xKxTiO3-xFx)における、x=0.1付近の三重臨界点近傍組成に注目し、その大型単結晶育成法を開発し、育成した良質単結晶により、臨界点近傍組成の誘電率、圧電率、自発分極の温度依存を、さらに、電場印加下における誘電率や比熱の温度依存を詳しく調べることで、三重臨界点の物理と物質の圧電材料としての可能性を明確にすることを目的に研究を開始した。 1)フラックス法による単結晶育成とその誘電特性:組成により異なる温度設定条件などの育成条件を検討し、x=0.023,0.058,0.073,0.083,0.14の5種類の単結晶を育成した。それぞれの結晶で電場印加下での誘電率測定を行った。特に、x=0.023の結晶で、良質の測定結果が得られた。誘電率は立方晶・正方晶転移温度(強誘電キュリー温度TC)でピークとなるが、20Hzの低周波での誘電率はTCでの誘電率の値が電場と共に増大し臨界電圧(臨界点)Ec=4 kV/cmで最大となり減少していく。この臨界電圧は組成xの増大と共に小さくなり、x=0.1付近で0となることがわかった。結果の一部は5月に開催される強誘電体応用会議にて発表する。 2)スパークプラズマ焼成法(SPS法)でのセラミックスの作製:単結晶育成の原料となるセラミックスの品質向上のため、SPS法での低温・短時間焼成を試み、KFの揮発を極力抑えることを可能にした。各組成に対するSPSの焼成条件を確立し、立方晶だけでなく六法晶チタン酸バリウムに関する焼成条件を明確にした。六法晶チタン酸バリウムの低温焼成で特許を提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)KF添加チタン酸バリウムの3重臨界点近傍組成物質の巨大誘電率・圧電率の起源解明として、試みた電場印加下における誘電率の測定で、予想以上に良い結果が出てきた。20Hz以下の低周波で測定すると、臨界電圧(臨界点)で誘電率が明瞭に増大する。これは、臨界点での揺らぎの増大を反映したものと理解できる。 2)SPSでのセラミックス作製において、1460℃以上で安定な六法晶チタン酸バリウムをKF添加で650℃の低温で合成できることを発見した。予期せぬ結果であるが、キャパシタ材料としての応用研究が期待される。 3)結晶のフラックス法での育成条件は確認できた。さらなる結晶の大型化への取り組みを次年度以降進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)大型単結晶育成: Top Seed Growth(TSG)法やTraveling Solvent Floating Zone(TSFZ)法による単結晶育成を始める。TSFG法の原料棒として、短時間での焼成が可能なスパークプラズマ焼成(SPS)法を用いる。昨年の求めた焼成条件で組成の異なる原料棒を作り、単結晶育成に当たる。 2)低周波での誘電率測定で臨界電圧での誘電率の増大を見出した。この点は、まさに1次転移から2次転移に移行する臨界点である。このことを、熱物性としても明確にするため、電場下での比熱の測定を開始する。 3)DE履歴曲線やパイロ電荷法で自発分極の温度依存を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ポーランドで開催された国際会議への出席を予定し旅費を計上していたが、大学の管理職業務との関係で出席できなくなり、その分の約20万が次年度に繰り越された。 今年から大学の管理職の業務から外れたので、科研の研究計画を進めるための時間を確保できる。今年度は、ラトビアで国際会議が予定されており、分担者と二人で参加し、研究発表を行う予定にしている。昨年度の繰越をこの旅費に当てる。
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Research Products
(12 results)