2015 Fiscal Year Research-status Report
スピン軌道相互作用の生む新しい磁性体スピントロニクス現象の微視的理論
Project/Area Number |
25400339
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河野 浩 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10234709)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Rashba型スピン軌道相互作用 / スピン軌道トルク / スピン波スピントルク / 温度勾配 / 線形応答理論 / 光応答 / 磁気双極子相互作用 / 異常ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Rashba型スピン軌道相互作用のある強磁性金属において、温度勾配で誘起される(伝導電子による)スピン軌道トルクを計算した。また、その逆効果である磁化ダイナミクスで誘起される(伝導電子の)熱流を計算した。ともに久保公式への補正が必要になるが、その補正項を同定し物理的意味を論じた。(PDの藤本純治、Utrecht大学の van der Bijl、Duineの各氏との共同研究) 2.温度勾配で誘起されるスピン波スピントルクの理論計算に取り組んだ。温度勾配を久保公式で扱うためのLuttingerの方法は、減衰項を手で入れる現象論的方程式(Landau-Lifshitz-Gilbert方程式)とは相性が悪いことを見出した。そのため、減衰の機構に立ち入った微視的モデルを設定し、その理論解析に着手した。(学生の山口皓史氏との共同研究) 3.バルクRashba系の光応答を、微視的モデル計算により調べた。その際、電場・スピン磁場・軌道磁場に対する、電流・電荷・スピンによる磁化電流の応答をすべて考慮した。強磁性磁化がRashbaと共存する場合も調べ、有効モデルを構築した。(柴田絢也、竹内祥人、多々良源の各氏との共同研究) 4.強磁性金属において、双極子スピン波(磁気双極子相互作用するスピン波)に散乱されることにより、電子の異常ホール効果が生じることを示した。これは、スピン波に対して双極子相互作用が一種のスピン軌道相互作用として働き、その軌道運動がカイラルになることに起因する効果である。(山本慧、佐藤浩司、齋藤英治の各氏との共同研究)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学科における雑務(教育委員長)のため、研究および論文執筆に十分な時間を確保できず、当初の研究計画は遅れている。一方で、新たな共同研究(学生および外部)により、当初予想していなかった成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
科研費の使用期間を1年延長して、以下の点に取り組む。 ・伝導電子による熱誘起スピントルクの理論の詳細を詰め、論文にまとめる。 ・スピン波による熱誘起スピントルクの理論の詳細を詰め、論文にまとめる。 さらに、Dzyaloshinski-Moriya相互作用のある場合への拡張に着手する。 ・双極子スピン波による(電子の)異常ホール効果の計算を、電子とスピン波の結合が強い場合に拡張する。
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Causes of Carryover |
学科の職務のため研究の進捗に遅れが生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
成果発表のための旅費。論文執筆のための計算機環境の整備(学生分も含む)。論文投稿料。
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