2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400387
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 神奈川大学, 工学部, 准教授 (80400282)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガラス / エルゴード性の破れ / 格子ガラスモデル / スローダイナミクス / エイジング / 位相空間分割転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、ランダムグラフ上のBiroli-Mezard(BM)格子ガラスモデルにおける、位相空間分割転移とダイナミクスの関連を中心に、研究を行った。その結果、転移点近傍におけるエルゴード時間がサンプル(グラフ)に大きく依存していることを明らかにした。ここでエルゴード時間とは、系が一旦初期状態を忘れ、それから再び初期状態に近い状態に戻ってくるのに必要な時間である。このエルゴード時間のサンプル揺らぎが、例えば格子点数Nが1000の場合、数百倍にもおよぶとの結果が得られた。このことは、転移点近傍における位相空間の構造がサンプルに著しく依存することを示している。その一方で、系が一旦初期状態を忘れるために必要な時間は、エルゴード時間よりもずっと短いとの結果も得られた。例えばN=1000の場合、前者は後者の約千分の1であった。このことは、エルゴード時間の大部分は、系が再び初期状態に近い状態に戻ってくるのに必要な時間であることを、つまり、系が初期状態から脱するのに要する時間と、再び戻ってくるのに要する時間は大きく異なっている、ということを示している。さらに、粒子密度に関する緩和時間を測定してみたところ、それは系が初期状態から脱するのに必要な時間よりもずっと短いとの結果が得られた。このように、位相空間分割転移の転移点近傍では、幾つかの異なるタイムスケールが共存しているわけであるが、その原因は現在のところ不明であり、その究明は次年度以降の研究課題の1つである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度より位相空間分割転移とダイナミクスの関連についての研究を始めており、本年度はランダムグラフ上のBM格子ガラスモデルの平衡ダイナミクスを中心に研究を行ったのだが、転移点近傍における異なるタイムスケールの混在など、幾つかの新しい知見を得ることに成功している。この点では研究は順調に推移していると言えるが、今回の研究で得られた知見に対するメカニズムの解明には至っていない。そのため申請者は、現在までの達成度をこのように判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
最初に、「研究実績の概要」で述べた、幾つかの異なるタイムスケールの共存について、その原因解明を目的とした研究を行う。また、昨年度の研究では平衡ダイナミクスの研究を中心に行ったが、今年度はエイジングなどの、非平衡ダイナミクスの研究も行う。非平衡ダイナミクスの研究では、自己相関関数の他に、実験でよく測定される、磁性体における磁場のような、外場に対する応答も測定する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に、CPUやメモリ容量のカスタマイズが可能な計算機の購入を予定しているが、その性能をより良いものとするため、今年度は使用額を抑制し、繰越金を次年度の計算機購入に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度購入の計算機のための予算として使用する。
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