2015 Fiscal Year Research-status Report
非対角有効場に基づく第一原理長距離電子相関理論の開発と鉄系化合物への定量的応用
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25400404
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
梯 祥郎 琉球大学, 理学部, 教授 (10191975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 尚志 北海道科学大学, 高等教育支援センター, 教授 (90265059)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 第1原理計算 / 非対角有効場 / 長距離電子相関 / 運動量依存局所変分理論 / 有限温度非局所動的CPA理論 / 射影演算子CPA理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.昨年度第1原理運動量依存局所変分理論の枠組みを完成させたが,本年度になって漸くその計算プログラムが完成し,その定量性の検証と具体的な物質への応用が可能になった.第1原理運動量依存局所変分理論を常磁性Feに適用して,相関エネルギー,電子数揺らぎ,局在モーメントの振幅,運動量分布関数,質量増大因子などを計算した.その結果,局所密度近似密度汎関数理論では記述できないフント相関エネルギーが3000Kと求められ,これにより従来のバンド理論による磁気エネルギー5000Kと第1原理動的CPA並びにDMFTに基づく磁気エネルギー2000Kとの不一致の原因が明らかにされた.また,sd混成効果のために電荷数の揺らぎが従来のdバンドモデル計算よりも大きくなること,局在モーメントの振幅が実験データを定量的に説明できることを明らかにした.さらに,第1ブリルアンゾーン内の対称性の高いk点に沿った運動量分布関数バンド構造を初めて明らかにし,sp電子が自由電子的に振る舞うのに対してd電子の運動量分布関数はFermi-Dirac関数から大きくずれることを見出した.そして,運動量分布関数の跳びから有効質量増大因子を求め,その運動量依存性を明らかにした.第1原理運動量依存局所変分理論から得られた平均の質量増大因子は比熱・ARPESの実験値を定量的説明し,最近の有限温度における第1原理DMFTの結果とも定量的一致を示すことを確かめた.さらに,計算をScからCuまでの鉄族遷移金属全体に拡大し,基底状態における種々の物理量の定量性と系統的変化ならびにその機構を明らかにした.
2.第1原理有限温度非局所動的CPA理論の高温近似であるスピンの揺らぎの第1原理分子動力学理論において,spdリカージョン係数比を改良して,Cu3Au型化合物Mn3Pt並びにMn3Irのノンコリニア磁気構造とその温度依存性を定量化した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では,第1原理運動量依存局所変分理論をすぐに非対角有効場第1原理自己無撞着射影演算子理論へ組込む予定であったが,前者の理論の中で平均値をWickの定理を使って手で求める部分の計算が予想以上に大変で遅れた.また,有限温度非局所動的CPA理論の具体的計算においては,クーロン相互作用が強い領域で分子動力学計算の不安定性が起こるために,数値計算が遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
1.第1原理運動量依存局所変分理論に基づく鉄族遷移金属の強磁性計算を推し進め,磁気的性質における理論の検証を加速すると共に,最近,実験・理論共に急激な進展がみられるFeSe系の有効ハミルトニアンを構成してその基底状態を第1原理運動量依存局所変分理論の立場から明らかにする. 2.第1原理運動量依存局所変分理論を非対角有効場第1原理自己無撞着射影演算子理論へ組み込む研究を推進すると同時に,ハートレー・フォック非局所状態密度計算プログラムならびにそれに基づく非対角有効場第1原理自己無撞着射影演算子理論計算プログラムの作成を進める. 3.有限温度における非局所動的CPA理論の具体的計算でみられる分子動力学計算の不安定性を解決するために,運動方程式の積分精度の問題や擬ポテンシャル的な考えを導入した理論の再定式化も含めて検討し,第1原理非局所動的CPA理論の構築へ向けた研究をさらに推進する.
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Remarks |
KAKEHASHI Laboratory http://www.phys.u-ryukyu.ac.jp/wiki/index.php?Kakehashi%20Lab
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Research Products
(12 results)