2014 Fiscal Year Research-status Report
ソフトマター3重周期極小曲面の構造と物性の理論的研究
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25400431
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
堂寺 知成 近畿大学, 理工学部, 教授 (30217616)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子 / ジャイロイド / 極小曲面 / タイリング / アルダー転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジャイロイド(G),ダイヤモンド(D),プリミティブ(P)とよばれる3重周期極小曲面に関連した共連続構造は1960年代の界面活性剤系に始まり、1990年代以降、ブロック共重合体、液晶、多孔質シリカ、有機-無機ハイブッリッド分子、生体内でもミトコンドリア、網膜色素細胞、葉緑体、蝶の羽の鱗粉などでつぎつぎに発見され、興味深い。 26年度の研究項目は、(1) 3重周期極小曲面上のアルダー転移の研究(P,D,G曲面の統一描像の構築)、(2) ABC格子高分子モデルの階層的ジャイロイド構造研究のまとめ、(3) FDTD法(時間領域差分法)を共連続相に応用したメタマテリアルという視点の研究、(4) 離散的3重周期極小曲面上の量子力学(タイトバインディングモデル)あるいはバネの固有値問題を重点項目として計画していた。また、この分野の世界的権威オーストラリア国立大学ハイド教授との国際学術連携も計画した。 (1)については、P、D曲面の計算機実験を行い、それら負曲率曲面上の規則構造を多数発見するという大きな成果を得た。成果の一部は、2015年3月のアメリカ物理学会 で A50.00002「Hard Spheres on the Primitive Surface」として口頭発表した。この研究が予想以上に進展したため、項目(3)については試行的研究のみを実施し、(2)、(4)については実施しなかった。 学術交流についてはドイツのガード教授やオランダのカーケンスガール博士と連携し、アメリカ物理学会でハイド教授を招待講演者とする「Beyond Gyroid」というセッション設立に寄与した。また、G曲面の発見者ショーン博士を主賓に国内のジャイロド研究者を組織し、Workshop Schoen Geometry: The Gyroid (奈良女子大2015年4月)の開催準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平面にパチンコ玉やビリアードの球を並べると、1つの球のまわりには6つの球が並ぶことは誰もが知っている事実であり、この構造は電子、原子から始まり、液晶分子、コロイド球や高分子のメソ構造(ソフトマター)に至るまで普遍的な規則構造である。あるいは、フラーレン分子(サッカーボール型)やウィルスの構造のように正曲率曲面である球の上の規則構造もよく知られている。しかし、負曲率曲面上の物理的な意味での規則構造の研究は歴史上なされていなかったと言ってよい。今回われわれの得た結果は、自然界でよく発見されるP、D、G曲面上、負曲率曲面上の規則構造を多数発見した点で画期的である。それらはまず空間群で整理され、双曲空間(ポアンカレ円盤)との対応、3次元のタイリングとしても解析された。したがって、この発見は数学的発見としても、物理学的発見としても非常に価値があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)3重周期極小曲面上のアルダー転移については大きな成果が得られたので、これを完成し、統一描像を構築し公表することが最終年度の最重要課題である。 (2)(1)以外の研究テーマとして、メタマテリアルの観点から共連続構造の固有値問題(フォトニクス、フォノニクス)を研究することを研究実施計画に掲げていたが、フォトニクスについては当初から外国から大きく取り残されており、後追いの月並みな計画であったため、現状でもブレークスルーの見通しが立っていない。したがって当初の計画を変更し、最終年度にこの課題は取り上げない。 (3)(1)の結果とソフトマテリアルについての研究動向から、全く新しい3重周期極小曲面を自己組織化するソフトナノマシーンを着想するに至った。これについて予備的研究をすることも最終年度に取り上げたい。
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Causes of Carryover |
年度末において3月の米国の物理学会旅費が不確定だったこと、学内業務のため3月末の日本物理学会に参加しなかったことの理由から11.5万円の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金は27年度の予算と合わせ物品購入に充当する予定である。
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Remarks |
科学技術振興機構(JST)サイエンスチャンネル・サイエンスニュースで準結晶について解説。英語版も作成された。
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Research Products
(16 results)