2014 Fiscal Year Research-status Report
地球接近小惑星の力学起源に関する観測的・数値的研究
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25400458
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
伊藤 孝士 国立天文台, 天文データセンター, 助教 (40280565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 二美 国立天文台, 国際連携室, 専門研究職員 (20399306)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小惑星 / オールト雲 / 天体力学 / 衝突 / 彗星 |
Outline of Annual Research Achievements |
本事業に関連する研究計画として、本年度は前年度に引き続き太陽系最外縁部にあるオールト雲天体の力学進化の計算を行った。この作業は主に研究代表者が進めている。本年度は昨年度に実施したオールト雲力学モデルと数値実験の結果の信頼性を高めるために、そこで仮定した銀河潮汐力モデルの妥当性を検証した。今回の検証作業により、小天体が太陽から遠方を飛行している際にはケプラー運動であることを仮定するいわゆる「時間飛ばし」スキームの妥当性がある程度まで立証された。しかし課題はまだ残っている。例えばここで考える銀河潮汐力のモデルは永年的なものであり、小天体の公転周期よりも長い時間スケールで有効という前提に立っている。この永年的な力は彗星雲自体の進化といった数億年スケールの現象には疑い無く適用できるものの、新彗星の一公転周期よりも短い時間飛ばしの期間に対して使うことの可否はさほど自明でない。また、今回の計算では「時間飛ばし」の期間中に発生し得る恒星遭遇を無視しているので、これについても定量的な見積もりを行う意義は十分にあろう。 観測的研究方面では、本年度より正式な稼働が開始されたすばる望遠鏡の新主焦点カメラ(HSC)による小天体の試験観測結果の解析を本格化させた。この作業は主に研究分担者が進めている。すばる望遠鏡HSCの視野はこの口径の望遠鏡としては極めて広く、直径90分角というものである。この広い視野と高い集光力を活かし、24等級より暗い微小な小惑星を一度の観測で数百個以上検出しようという本格観測の準備段階が今年度であった。既に試験観測のデータは取得されているものの解析用のアプリケーションの設定に予想外に時間が掛かり、本報告を執筆する段階ではまだ特定の成果として提出できるものは無い。しかし今後はこちらの作業を本格化し、数値実験と対比できる高品質での観測データを算出する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全般的にはおおむね順調に進展しているが、小天体の衝突破壊進化現象を検証すべき数値実験の準備が遅れており、未だ実行に至っていない。その部分を除けば概ね当初計画に沿って進行してはいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って引き続き小天体の力学進化・衝突についての数値実験を進行するとともに、光学観測によってメインベルト小惑星のサイズ頻度分布を推定する試みを実施する。研究スケジュールや内容に申請当初からの大きな変更は無い。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に当初計画からの遅れが発生したので、本年度に購入する予定だった加速器計算機システムの購入を見合わせ、翌年度に回したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本事業の当初計画に沿い、加速器計算機システムの購入を実行する。
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