2014 Fiscal Year Research-status Report
後期オルドビス紀の古環境変遷:オルドビス紀-シルル紀境界で何が起きたのか?
Project/Area Number |
25400495
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上松 佐知子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50466661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸岡 照幸 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80400646)
指田 勝男 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60134201)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 岩相層序 / 生層序 / 地球化学的分析 / オルドビス紀 / シルル紀 / マレーシア / 古環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の実施内容は以下の通りである:1)研究対象セクションから採取した岩石試料について古生物学的および堆積学的分析を行った;2)これらの試料の化学分析を実施した;3)別の研究対象地域について予備的な調査を行った。 1)について、先行研究による三葉虫および腕足類の層序学的データに基づき、オルドビス紀-シルル紀境界が本研究の調査セクション下部約3 mの部分に存在すると推定し、これを中心に分析を行っている。具体的には採取した約30個の黒色頁岩試料の薄片を作成すると共に酸処理による微化石抽出を試みた。薄片観察から調査セクションの微岩相が明らかになった。すなわち、下部約1 mは黒色有機物あるいは粘土鉱物を主体とする葉理状の堆積岩と、含礫粗粒砂岩および細礫岩からなる。セクション上部の約2 mは黒色有機物あるいは粘土粒子を主体とする葉理状の細粒堆積岩で、微化石殻を多量に含む。また、厚さ数mmの黄鉄鉱粒密集層が頻繁に挟在する。これらの岩相および生層序学的考察から、以下のような古環境を復元した。後期オルドビス紀KatianからHirnantianの間に陸棚上の生物相が消滅し、黒色有機質頁岩が堆積する場となった。Hirnantian後期に海水準の低下が起こり、粗粒砕屑物が流入した。この期間、三葉虫・腕足類等からなる特徴的な寒冷群集が生息していた。その後海水準が再び上昇したが生物相は回復せず、有孔虫・放散虫を含む微化石群集の断続的な繁栄と貧酸素水塊の出現が繰り返された。この環境は前期シルル紀の終わりまで継続した。 2)については現在前処理を含めた分析を継続中である。 3)に関して、タイ国南部地域の予備的な文献調査およびタイ国地質調査所との研究打ち合わせを行い、調査地域の追加を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採取した堆積岩中から化石を抽出し、これをもとに生層序学的考察を行う予定であるが、化石の保存状態が悪く同定に耐え得る標本が得られていない。これを補うため、堆積岩から微化石を単離することなくその形態を観察する方法(マイクロCTによる岩石内部の撮影)を試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
堆積学的検討および地球化学的分析を更に進める。上述の生層序学的考察における問題点について、これを解決する為、放射光実験施設においてX線マイクロCT撮影を行う予定である。これにより岩石中に含まれる微化石殻の形態を観察し、化石を同定することが可能になると考えている。以上のデータを合わせて古環境の変遷過程を復元し、本調査地域におけるオルドビス紀-シルル紀境界の特徴を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画していた海外調査(タイ国)について、2名で行う予定だったものを1名のみで実施しために、未使用分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度は、採取した試料の化石同定に関して放射光実験施設でのCT撮影を行う予定である。これは元の計画になかった実験だが、研究の遂行において必要不可欠であるため、26年度未使用分をこの分析準備および旅費に充てる予定である。
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