2013 Fiscal Year Research-status Report
プラズマアシストによる熱電半導体Mg2Si薄膜合成の低温化
Project/Area Number |
25400530
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池畑 隆 茨城大学, 理工学研究科, 教授 (00159641)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マグネシウムシリサイド / 固相合成 / 薄膜 / 結晶構造 / スパッタリング / 熱電半導体 / ラマンスペクトル |
Research Abstract |
1 Si(111)基板上に約5μm厚のMg膜をスパッタ成膜し、アルゴンガス中アニール処理(Ar圧力900Pa, アニール温度200~500℃)によりMg2Si合成を試みた。XRDとレーザーラマン分光を用いた結晶構造解析により、結晶性に優れた多結晶Mg2Siの固相合成に成功した。固相拡散によってシリサイドが合成されるには、200℃を超える温度でのアニールが必要であった。Mg2Si(111),(220) XRDピーク強度のアニール温度依存性から、最適温度は350~400℃であることがわかった。500℃ではXRDピーク強度の減少があり、Mgの蒸発が疑われた。 2 500℃の高温アニールでマグネシウムの蒸発が疑われた。そこで試料の上方10mmに水晶式膜厚保計を設置し、アニール中のマグネシウムの蒸発をモニタリングした。350℃以下では蒸発量が無視できるものの400℃を超えると急激に増加し、マグネシウムが損耗した。一方、500℃でAr圧力を9000Paまで上昇させると、蒸発は1/100以下まで抑えられ、膜厚の低下も抑えられていることが、触診式段差計やXRD測定からから確認された。 まとめると、9000Pa程度までAr圧力を上昇させ、マグネシウムの蒸発を抑えれば、350~500℃の温度領域で良質のMg2Si多結晶膜が得られる。 3 合成膜の結晶性が確認されたので、四端子法によるシート抵抗の測定、ホール効果の測定を試みたが、膜の抵抗が大きく電流が流れない。膜が絶縁性になる理由は丸剤までのところ不明であり、様々な可能性を検討している。 4 以上、まとめると、XRDとラマン分光から結晶性に優れたMg2Si膜の合成には成功したが、電気特性が予想外の結果であり、その原因を追及している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Si基板上Mgスパッタ膜のAr雰囲気中アニール処理により、結晶性に優れたMg2Si多結晶膜の合成に成功している。また、合成に最適なアニール温度範囲を明らかにしている。 一方、膜が高抵抗であるという予想外の結果も出ており、電気的特性がまだ明らかになっていない。原因究明が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
1 Si基板上Mgスパッタ膜のアニール処理により合成されたMg2Si膜が高抵抗になるという結果について、その原因を探求するとともに、解決法を探る。 2 同時に、フレキシブル基板への成膜を最終目標とするものの、その前段階として、単結晶サファイア基板、非結晶ガラス基板へのMg2Si合成を試みる。そのために、SIのマグネトロンスパッタを増設し、非Si基板上へのMg, Siスパッタ成膜とAr雰囲気中ポストアニールによって、非Si基板上でのMg2Si膜の合成に挑戦する。そして、合成に最適なAr圧力、アニール温度の条件を明らかにする。Mg,とSiのスパッタ成膜にもいくつかオプション(Mg,Si同時堆積、Mg-Si二層堆積、Si-Mg二層堆積、Mg-Si交互多層堆積)があり、それらのアニール合成膜の物性の違いを調査することは興味深い。最終的には、非結晶基板(ソーダガラスなど)上に良質なMg2Si膜を合成することを目標とする。当然、良好な電気特性(シート抵抗、キャリア濃度、移動度)を期待したい。 絶縁体であるガラス基板を用いることで合成膜の電気的性質がより明確に評価できるはずである。 ここで、Mg2Si半導体膜の合成を確立する必要がある。そのために、様々な物性測定と合成法を組み合わせた条件探索を確実に実施する。 3 Mg2Si合成のための最適条件が見いだされたら、これにプラズマアシスト(プラズマによるラピッドアニール)を組み合わせて、合成の低温化を試みる。目標は200℃である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品としてモジュール式ラマンシステムの購入を申請したが、その後のデモ品の試用のなかでプロセスモニタとして使用するには感度が引く選ることが判明、一方、その場測定ではないが、本学に導入された顕微ラマンシステムで十分代替できることがわかった。そこで、本科研費研究で必要な合成膜の電気特性を効率的に調査するために、シート抵抗測定システム(簡易プローバー+GPIB付エレクトロメーター+ソフトウェア)を導入した。後者は前者より低価格であったため残額が生じた。 マグネシウムシリサイドを合成するには、原料であるマグネシウムとシリコンを基板上にスパッタ堆積させ、希ガス雰囲気中で加熱するが必要である。現在700℃まで加熱できるヒーターを保有しており、科研費研究に供しているが、加熱・冷却を繰り返すので損耗が無視できない。断線すれば実験がストップしてしまう。 そこで、予備の加熱ヒーターの購入に充てたい。残額が発生した場合には、シリサイド膜の特性評価を更に充実させるため、委託分析の費用に充てたい。
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Research Products
(5 results)