2014 Fiscal Year Research-status Report
プラズマアシストによる熱電半導体Mg2Si薄膜合成の低温化
Project/Area Number |
25400530
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
池畑 隆 茨城大学, 理工学研究科, 教授 (00159641)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マグネシウムシリサイド / 固相合成 / 薄膜 / 希ガス雰囲気中アニール処理 / スパッタリング / 熱電半導体 / 結晶構造 / 近赤外分光透過率 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 従来のSi基板に替えて単結晶サファイア基板上(筆者の知る限り世界初)にMg2Si膜の合成を試みた。Si基板ではMgのみを堆積させ、加熱合成できたが、今回はMgとSiの輸送量制御、堆積・合成方法の検討が必要であった。これらの事項を実験的に調査し、サファイア基板上での良質のMg2Si膜の合成に成功した。 2 Mgスパッタ(dc)に加えてSiスパッタ(rf)を今回新たに整備し、基板との距離、入射角を変更できる設計とした。その上で、水晶膜厚計を用いて、Mg, Siスパッタ堆積レートの入射角、距離、電力依存性の基礎データを取得した。 3 上記2のデータを元に堆積条件を決定した結果、化学量論比(Mg2:Si1)と膜厚を十分制御することができた。 合成実験は①Si on Mg、②Mg on Siの逐次堆積、③Mg/Si同時堆積の3ケースについて行った。XRD、顕微ラマン分光による結晶構造解析、触診式段差計による膜厚測定を行った。①では膜が簡単にはがれるなど、合成に不適であった。②③では多結晶膜の合成が確認された。特に②では、極めて高強度で鋭いMg2Si(111)X線回折ピークが観測されたことから、基板配向性が強く、結晶子サイズの大きな良質な多結晶膜が合成されたことが分かった。 4 可視・近赤外分光システム(研究室設備、簡易型)により,合成膜の分光透過率を測定した。赤外領域(~2μm)で 40%(膜厚~2μm)~80%(~1μm)の高い透過率を示し,可視領域では強い光の 吸収が現れたことから、ナローバンド半導体の光学特性を有することが示唆された。吸収係数からバンドギャップ(0.7 eVとの報告有り)を評価することはできておらず、今後の課題である。また合成膜のシート抵抗が大きいことも検討を要する。 まとめると、サファイア基板上に結晶性、赤外透過性に優れたMg2Si膜を合成することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
従来のSiではなく原料のMg, Siを含まないサファイア基板上に良質なMg2Si膜を合成できたことは、大きな成果と考えるが、この実験研究に時間を要したため、予定していた、プラズマ支援による固相合成の低温化の予備実験を開始できなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
プラズマ支援によるMg2Si膜合成の低温化の実験を最優先に進める。高周波電源(13.56 MHz, 300W)やマッチングボックス、アンテナエレメントなど必要機材は揃っているので、まずは、5~6月中に現在の合成装置の配置でICPプラズマを発生させることを目標に研究を加速したい。
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Causes of Carryover |
サファイア基板など、消耗品の購入額が計画より少なくて済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額の15,097円は次年度研究計画の消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(4 results)