2013 Fiscal Year Research-status Report
静電型リニアイオントラップを用いた準安定状態イオンの禁制遷移寿命測定の精密化
Project/Area Number |
25400537
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
斉藤 学 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (60235075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
春山 洋一 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00173097)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分光計測 / 禁制遷移 / 放射寿命 / トラップ / プラズマ |
Research Abstract |
トラップに蓄積された準安定状態イオンからの脱励起光分光のための光学系を製作、設置した。光学系はビューポート、レンズ、バンドパスフィルタ、フォトマルチプライヤ、計測回路から成り、トラップへの1パルスビーム入射あたり0.1光子程度の脱励起光を測定できるように設計された。 次に、製作した光学系に対して以下の試験を実施した。(1)イオンの蓄積位置にLEDを設置した。LEDからの光がフォトマルの検出面に最適に収束するように、光学系の微調整を行った。(2)トラップに蓄積されたKr2+の1S0準安定状態からの脱励起光(350nm)を光学系で実際に測定した。フォトマルチプライヤからの信号をモニターしながら、SN比が最大になるように、スレッショルドレベル等の計測回路の調整を行った。(3)Kr2+の脱励起光波長(350nm)と異なる近隣波長のバンドパスフィルタを用いて、バックグラウンド以上の光子数が検出されないことを確認した。これによって、目的波長の光子だけが確実に測定されていることを確認した。 最後に、Kr2+の1S0準安定状態からの脱励起光を試験的に短時間測定した。このデータより、本実験装置で決定される寿命値の誤差を見積もった。結果は、トラップへのイオン入射と光子検出を14万回繰り返して測定することで(約80時間の測定時間に対応)、2%の測定誤差の寿命値を決定できることがわかった。この精度は、過去の他グループの測定精度を2倍以上上回る精度である。 これらの研究より、準安定状態の放射寿命を高精度で測定できる実験装置の完成という本年度の実施計画を、年度内に遂行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画は、準安定状態にあるイオンの放射寿命を高精度で測定できる実験装置の完成であった。この計画を、試験測定も含めて、年度内に遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
製作した装置を用いて、1S0準安定状態Kr2+イオンの3P1状態への禁制遷移寿命測定実験を行う。この準安定状態に対する過去の他グループの測定誤差は5%程度である。本装置によって、誤差2%以下の精度で寿命値を決定し、過去の測定値、理論値との比較、検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、実験装置の製作、試験の段階のため、他研究で用いているフォトマルチプライヤとそのハウジング、ガス試料を適宜借用しながら、研究を行った。そのため、それら物品の購入に予定していた費用が、本年度中に使用されなかった。 装置の完成が確認されたため、本研究は寿命値の長時間測定実験の段階に進む。そこで、これまで転用していたフォトマルチプライヤとそのハウジングを本研究専用のものに交換する。また、長時間測定に必要なイオン源ガス試料を購入する。あとは計画通り、中性粒子検出用のマイクロチャンネルプレートの交換、および研究成果の学会発表のための旅費に支出する。
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