2014 Fiscal Year Research-status Report
光合成水分解触媒マンガンクラスターの酸化還元特性の解明
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25410009
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加藤 祐樹 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10376634)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光合成 / 水分解 / 酸素発生 / 分光電気化学 / 酸化還元電位 / 電子伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光合成反応のうちで最大の謎とされる水分解→酸素発生反応の分子メカニズムの解明を目的に、FTIR差スペクトル法を分光電気化学法に適用した計測系を新たに構築して実測に挑むことにより、天然の水分解系の作動電位領域と駆動力という物理化学的実態を明るみに出すことを目指している。平成26年度においては、初年度に確立したFTIR分光電気化学計測系を用いて、光化学系II マンガンクラスターのEmの決定を最優先に実験を進めた。+400 mVから0 mV付近における反応の電位依存性を調べたところ、マンガンクラスターは徐々に還元されることを見出した。この電位領域でマンガンクラスターの還元されていく様子を観測したことは初めてのケースであるといえるが、メディエーターとの電子授受が遅いためか、ネルンスト応答が観測できるまでには至らなかった。この点については、今後メディエーターの選択や測定条件を検討することにより、詰めていく予定である。また、この測定を通じて、還元側で機能している第二電子受容分子プラストキノンQBの酸化還元応答が観測された。これをネルンストプロットにより解析すると、+159 mVを中点電位とする二電子酸化還元反応を示していることが分かった。さらに、この電位値は、Mnクラスターを損傷させてもほとんど変化しないことが明らかになった。したがって、酸素発生活性のある光化学系IIでは、QAとQBの電位差は240 mV程度であり、Mnクラスターを損傷させると90 mV程度に小さくなるといえる。このEm差の減少により、QB-からQAへの逆電子移動とそれに続く電荷再結合が促進されることで、Mnクラスターが損傷した際の光防御機構が働いているものと考えられる。以上のことから、FTIR-分光電気化学計測により、初めて2つのキノン分子による電子伝達制御機構を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度の目標であった、マンガンクラスターの酸化還元状態を追跡することがほぼ可能となり、さらなる条件見当は必要であるが、ほぼ当初の予定を達成できたと考えている。また、付随的に探索していた電位付近で、世界で初めて光化学系II第二キノンQBの酸化還元計測を実現するに至り、想定していた以上の結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
マンガンクラスターの酸化還元特性の解明に向け、さらなる条件検討・使用メディエータの検討などを行い、酸化還元電位の決定を目指す。また、高電位側での測定を行うことにより、電子伝達系の全容解明に向けた測定にも取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
概ね当該年度の所要額となったが、測定に用いる金メッシュ電極が輸入品でかつ特注品なため、年度内に納入されるのが難しく、次年度に支払うこととなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度に納品が持ち越しになった物品に加え、当初の予定通りの配分を基に、予定通り研究。実験に使用する予定である。
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