2014 Fiscal Year Research-status Report
カリックスアレーン結晶の相転移を利用する高選択的有機分子包接
Project/Area Number |
25410032
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
諸橋 直弥 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344819)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | カリックスアレーン / 包接結晶 / 芳香族位置異性体 / アミン / カルボン酸 / トルイジン / メチルピリジン / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画課題に対して,本年度は下記の成果を得た。 1.カリックス[4]アレーン(CA)結晶を用いた,芳香族位置異性体に対する競争的包接実験を懸濁法により行った。その結果,例えば,キシレン異性体からはp-異性体が中程度の選択性で,クロロトルエン異性体からは,p-異性体が高選択的に捕捉されることがわかった。また,包接結晶の粉末X線解析の比較から選択性の発現要因に関する知見も得た。チアカリックス[4]アレーン(TCA)結晶を用いたメチルアミン類の包接について,精査した。その結果,ジメチルアミン/トリメチルアミンを含む溶液からの競争的包接実験において,溶媒の極性により,その選択性をスイッチングできることが明らかとなった。溶媒の極性の指標として誘電率を用いた。TCA結晶は低誘電率の溶媒からはジメチルアミンを,高誘電率の溶媒からはトリメチルアミンを高選択的に捕捉した。 2.CAおよびTCAの有機分子包接結晶からのゲストの回収およびホスト結晶の再利用について精査した。その結果,TCAの有機分子包接結晶においては,メタノール中で加熱攪拌することで,効率良くゲストが回収でき,再利用可能なホスト結晶が再生することが明らかとなった。 3.硫黄架橋フェノール二量体のヒドロキシ基の両オルト位にカルボキシメチル基を導入したホスト分子を用いて,塩基性化合物の異性体をゲストとした競争的包接実験を結晶化法を用いて調査した。用いる溶媒や温度条件を最適化することで,トルイジン異性体からはp-体を,メチルピリジン異性体からは4-メチル体を高選択的に捕捉することに成功した。包接結晶のX線結晶構造解析にも成功し,ホストとゲストが構築する擬環状空間が選択性の発現に重要であることもわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CA結晶の特性を利用して芳香族異性体の選択的包接を達成した。また,TCA結晶によるアミンの包接において,従来例のない,ゲスト選択性のスイッチングにも成功した。また,ゲスト包接結晶からのゲストの回収とホスト結晶の再利用法も確立しつつある。さらに,塩基性ゲストの選択的包接を可能とする,非環状ホストの設計指針も得ることができた。以上より,本研究課題は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を踏まえ下記の課題に重点的に取り組む。 1.CAと芳香族位置異性体の包接結晶のX線結晶構造解析,示差走査熱量測定等により,選択性の発現要因を明らかにする。また,ゲスト適用性の拡大,さらには選択性の向上について検討する。TCAについては引き続き,水素結合性ゲストの選択的包接について精査する。 2.CAのゲスト包接結晶からゲストの再利用と結晶の回収について,より詳細に調査し,メカニズムも明らかにする。また,TCAおよびCAのゲストフリー結晶多形の性質を利用した包接能の制御についても検討する。 3.2,2’-チオジフェノール骨格を有するジカルボン酸誘導体による塩基性ゲストの適用性を拡大する。また,導入する官能基を変えることで,アルコール等の異性体の選択的包接を可能とするホストも開発する。さらに結晶を用いた,直接かつ選択的なゲスト包接へも展開する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額は本年度の研究計画を効率的に遂行したことにより発生した未使用額である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の請求額と合わせ,平成27年度の研究計画遂行ならびに成果発表に使用する予定である。
|
Research Products
(7 results)