2014 Fiscal Year Research-status Report
斬新かつグリーンな新規炭素-炭素結合生成反応の不斉触媒化
Project/Area Number |
25410036
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
相川 光介 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30401532)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 含フッ素化合物 / トリフルオロメチル / ジフルオロメチル / エン反応 / 触媒的不斉合成 / 不斉ルイス酸 / パラジウム触媒 / パーフルオロアルキル |
Outline of Annual Research Achievements |
含フッ素有機化合物は医農薬や機能性材料の分野で特異的な効果を発揮することが知られている。我々は炭素-炭素結合形成反応によるトリフルオロメチル基を有する三級アルコールの触媒的不斉合成法を開発してきた。このような光学活性三級アルコール骨格が薬理作用発現に重要な役割を担っていることは広く知られているが、さらに多様なフルオロアルキル基の導入を検討することは医薬品探索を行っていく上で重要であると考えられる。そこで26年度は、ジフルオロメチル基をはじめとする多様なフルオロアルキル基を有するα-ケトエステルに対する触媒的不斉炭素‐炭素結合形成反応、特にカルボニル‐エン反応を開発することにより、対応する光学活性三級アルコールの実用的合成法を開発することにした。 ジフルオロピルベートを用いるジカチオン性パラジウム触媒によるエン反応の条件最適化と基質適用性について精査した。その結果、1,1’-二置換オレフィンについてはα-メチルスチレン系などの基質で反応が良好に進行し、より反応性の低い一置換オレフィンにおいてもアリルベンゼンと1-ヘキセンで高エナンチオ選択的に反応が進行した。また、三置換オレフィンでは、ジアステレオ選択性が低いものの高いエナンチオ選択性で反応は進行した。さらに検討を重ねたところ、イソブテンを求核剤に用いた場合、無溶媒条件下、S/C 2000で良好に反応が進行し、高エナンチオ選択性で生成物が得られることが分かった。この生成物のX線結晶構造解析により、絶対配置はRと決定した。なお、不斉ルイス酸触媒として汎用されるビスオキサゾリン銅錯体では、全く反応が進行しないことも分かった。 さらに、パーフルオロアルキル置換されたピルベートやブロモジフルオロピルベート、ジフルオロヨードピルベートといった嵩高い求電子剤を用いた場合でも同様に、パラジウム触媒で反応が効率的に進行することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現代の有機合成では、入手容易な原料分子から求める機能をもつ分子を、簡単に、安価に且つ安全に合成できる“実用的”な合成法の開発が必要とされる。このような背景から、本研究では、高付加価値な分子(ファインケミカルズ)を創造する新規な触媒的不斉炭素‐炭素結合生成反応を開発するとともに、これを実用化可能な超効率的不斉合成法に成熟させることを目的としている。 そのような研究目的において、今年度に開発したジフルオロメチル基をはじめとする多様なフルオロアルキル基を有するα-ケトエステルに対する触媒的不斉カルボニル‐エン反応では、無溶媒条件下、触媒量を0.05 mol%(S/C 2000)まで低減させても良好に反応が進行し、高いエナンチオ選択性で生成物が得られることを見出した。この結果は、廃棄物を最小限に抑えたグリーンな触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応であり、今後の実用化が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、重要医薬品中間体となり得る光学活性化合物を超効率的に合成するために、これまで前例のない新規触媒的不斉炭素-炭素結合生成反応を開発する。さらに、開発した反応において、触媒量の目標をS/C >1,000に設定し、溶媒や温度、反応スケール等の条件を徹底的に検討することで、実用化可能な触媒的不斉合成法を確立したい。一方、これまで用いてきたジカチオン性パラジウム錯体で目標とする触媒活性が達成できない場合は、我が国の元素戦略に基づいた、安価な銅や鉄錯体を独自に設計・合成し、新規不斉不斉炭素-炭素結合生成反応の開発を行う予定である。 また、現在までのところ成功には至っていないが、触媒量のラセミBIPHEPs触媒を触媒的に不斉制御剤する試みも引き続き行っていく予定である。
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Research Products
(3 results)