2014 Fiscal Year Research-status Report
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25410129
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
塚原 安久 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20135312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 馨 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (40401533)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マクロイニシエーター / リビングアニオン重合 / リチオ化 / 特殊構造高分子 / 多分岐ポリマー / アルボレッセント型グラフトポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
トルエン中アルキルリチウムおよびテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)存在下、スチレンのアニオン重合を行うと、アルキルリチウムから溶媒のトルエンへアニオン移動が起こり、これによって生成したベンジルアニオンがリビングアニオン重合の良好な開始剤として働き、分子量分布の非常に狭い高分子が得られることを以前に報告している(Y. Tsukahara, et al., Polym. J., Vol.26, No. 9, pp. 1013-1018 (1994), 後藤圭二ら, 高分子論文集, Vol.64, No.12, 943-948 (2007))。 本研究では、この知見を応用してポリパラメチルスチレン(PpMSt)のメチル基をメタル化(主にリチオ化)することで多官能性マクロイニシエーターとし、これを用いて分子ブラシ型ないし櫛形の多分岐ポリマーへ誘導するとともに、さらにパラメチルスチレンモノマー(pMSt)のリビングアニオン重合を行ってリチオ化を繰り返すことで、アルボレッセント型多分岐ポリマーを得る方法を確立した。また、この手順の繰り返しで分岐世代が増加した超多分岐アルボレッセント多分岐ポリマーすることも可能となった。 また、リビングポリマー末端にアミノ基、水酸基、チオール基などの種々の官能基を導入し、チオール基を導入したポリマーについて金ナノ粒子との複合体の合成への検討に入った。また、直鎖状ならびに環状マクロイニシエーターを経由して分子ブラシ状多分岐ポリマーならびに太陽型多分岐ポリマーの合成を行い、分岐構造の違いによる分子特性ならびにバルク特性の違いについて検討した。また、同様のメタル化反応を用いて表面に開始点を投入したシリカ微粒子から重合を行い無機・有機複合粒子の合成も試みた。これの研究結果の一部は、特許3件に出願して特許公開となり、また、別に特許1件を出願した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リビングアニオン重合で得たポリパラメチルスチレン(PpMSt)のメチル基をリチオ化して直鎖型マクロイニシエーターを合成し、pMSt、スチレン(St)およびイソプレン(Isop)などのビニルモノマー、ジエンモノマーの重合を行い、重合がリビング的に進行することを確認した。また、重合生成物として各種分子ブラシ状多分岐高分子を得ることができた。また、直鎖型マクロイニシエーターでpMStのリビングアニオン重合を繰り返し行うことで、順次、分岐世代が増加した多分岐型マクロイニシエーターを合成することができ、これを用いて世代数の異なる超多分岐アルボレッセントグラフト高分子の合成について確立することができ、枝鎖末端への官能基の導入ならびにこれを用いた金微粒子との複合化について検討することができた。また、直鎖型マクロイニシエーターを環化することで環状のマクロイニシエーターを得ることができ、これを用いたSt、Isop、2-ビニルピリジン(2VP)のリビングアニオン重合により各種太陽型高分子の合成が可能であった。これらの各種多分岐高分子を用いて分岐構造の違いによる分子特性ならびにバルク特性の違いについて系統的に検討を行う基盤を確立することができた。また、これの研究結果の一部は、論文に先立って特許3件に出願することができ、3件とも公開となった。さらに特許1件を出願するとともに学術論文1報をまとめ、さらに数報の投稿準備を行っている。以上より、現在までの研究の達成度は、ほぼ予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、前年度に引き続き、アルボレッセントグラフト高分子の分岐数・分岐密度ならびに分岐鎖長の制御について検討を加えるとともに多分岐構造・特殊構造に付随するバルク特性・材料特性の特徴について検討しまとめる。また、アルボレッセントグラフト高分子の機能開拓のため、アルボレッセントグラフト高分子の側鎖(枝鎖)末端または側鎖全体を官能基により修飾を引き続き行う。本課題で合成する高分子は各段階のマクロイニシエーターとリビングアニオン重合との併用により合成されるため、重合完了後も活性末端を保っている。これを利用して末端基の機能化を行い、超多分岐高分子の末端または側鎖修飾による触媒特性およびプロトン伝導特性の観点から、アルボレッセントグラフト高分子の機能開拓を行う。特にアルボレッセントグラフト高分子の触媒特性とプロトン伝導特性に着目し、それぞれ適当な反応停止剤を用いて金属配位子やポリエチレンオキシド鎖による機能化を行う。アルボレッセントグラフト高分子の超多分岐構造により金属配位子を分子内に極めて多数導入することで、触媒能の飛躍的な向上が見込まれるのでこれらの点について検討を行う。また、ポリエチレンオキシド鎖の導入では、超多分岐構造による高密度のポリエチレンオキシド鎖導入と、結晶化抑制効果の相乗効果によるイオン伝導度の上昇につながる。このように官能基変換を行うことで、多分岐構造に起因する機能開拓を行う。この機能化において、活性な重合末端のみの官能基化では十分な官能基密度が得られない可能性が考えられるが、その場合は側鎖トリル基のリチオ化を行うことで一分子当たりの官能基密度を高めることができる。また、分岐世代数の増加によりアルボレッセントグラフト高分子一分子当たりの末端数を著しく増やすことができるので、これら点を考慮しながら官能基の導入による機能化についてまとめる。
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Causes of Carryover |
本年度の平成26年度は、必要な試薬・器具などの経費が多くなって当初予算の不足が見込まれて初年度から約30万円を繰り越して使用した。ほぼ計画通りの予算執行であったが、旅費の経費を抑えたため1,919円の余りが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の平成27年度は、最終年度であり、本年度からの1,919円を加えて予定通りに執行する使用計画である。
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Research Products
(24 results)