2014 Fiscal Year Research-status Report
超高速度撮影および高精度数値解析を駆使した破壊制御評価法に関する基礎研究
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25420016
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤本 岳洋 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 教授 (60314514)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 切断加工 / 破壊力学 / 動的J積分 / 切り欠き径 / 荷重速度 / 破壊実験 / 有限要素解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
切断面付近に大きな塑性変形が生じる仕様では,切断後の加工部材形状を制御することが難しくなる.そのため,切断加工ではぜい性,準ぜい性を示す材料を加工対象とすることが多い.本研究では炭素含有率が高い工具用炭素鋼SK85を試験片材料として,実験を行った.加工部材を完全に分離するためには,き裂進展開始前までに相当のエネルギーを部材に与えておく必要がある.初期切り欠き径を大きくすると径先端の応力集中度合いが下がり,き裂進展開始までに多量のエネルギーが部材内に蓄積する.しかし,過剰なエネルギー供給はき裂進展を不安定なものとし,破面のひび・欠けを生じさせる恐れもある.また負荷速度によってもき裂進展開始までの部材へのエネルギー供給量が変化し得る. 破壊実験は三点曲げ仕様で行い,初期切り欠き径(直径)を約0.3, 0.5, 0.7mmとした.また負荷速度も準静的荷重(0.025mm/s荷重点変位制御),衝撃荷重(質量1kgのストライカーを約5m/s,20m/sで衝突)に分けて破壊実験を行い,破壊挙動に及ぼす初期切り欠き径,負荷速度の影響を調べた. 上記実験の荷重・き裂進展り歴に基づく数値解析を行った.切り欠き径からのき裂進展開始のクライテリアを探るため,半円状切り欠き形状と破壊後のき裂進展挙動(き裂面形成による境界条件の変化)を再現した移動有限要素解析プログラムを作成し,シミュレーションを行っている.得られた変形場からは動的J積分等を評価した. また,コネクティングロッド構造についても数値シミュレーションを行った.複雑形状を有するコネクティングロッドでは破断面に対して一様な引張力を作用させることが容易ではない.そこで引張力が偏在化した際の影響,き裂進展が非対称に生じた際のき裂先端特異応力場の状況を評価した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の研究進捗は平成26年研究計画通りであり,「概ね研究は順調に進展している」と判断する. 所定量の定常な破断面を形成する場合は,単純な大荷重や切り欠き径の大寸法化では用をなさない.破断加工の最適化には,破壊挙動自体の定量的評価と制御が必要となる. 三点曲げ破壊試験を通じて,様々な荷重速度,初期切り欠き径におけるき裂進展挙動を超高速度カメラを用いて観察した.実験条件を問わず,各き裂進展のき裂進展速度は約120-140m/sとなった.但し,初期切り欠き径が小さい,もしく荷重速度が低いと破壊エネルギーの供給が不足がちとなり,現象の後半期にき裂進展速度は急減(あるいは微小時間中,一時停止)することが確認された.現在の実験条件の範疇では,初期切り欠き径が小さく(直径約0.3mm),荷重速度を高くした(ストライカー速度約20m/s)結果が最良である(き裂進展速度が急変しない,目視で見た破面に荒れが見当たらない,ひび・欠けが生じない). 以上の条件に基づく移動有限要素解析を通じて,動的J積分の評価を行った.荷重入力エネルギーの影響が反映し,き裂進展開始時の切り欠き径先端付近の応力分布,き裂進展中の動的J積分値に違いが生じた. またコネクティングロッド(断面形状変更試験片相当)の数値解析についても実き裂前縁形状,非対称き裂進展,初期切り欠き径寸法変化相当の効果を再現した数値解析を実施した.その結果,引張負荷の偏りがき裂進展を非対称化させ得ること,予切り欠き径の違いがき裂進展時の動的J積分値の増減を招くことが明らかとなった.
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度の研究成果から,き裂進展挙動は予切り欠き径からのき裂進展開始時間(き裂進展開始までに部材に蓄積したポテンシャルエネルギー)に強く依存することが判明した.そのため,切り欠き径に応じたき裂進展開始条件を明らかにする必要がある.今後は予切り欠き径端部からのき裂進展開始に注目した実験を行っていく. また,既に実施した実験結果破面の粗さ計測を行い,数値解析で評価した動的J積分値等との関連付けを行い,破面状態の定量的評価に結び付けていく.
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Causes of Carryover |
平成26年度購入予定であったデータロガーについては現在,他研究室より無償供与にて実験を実施できる状況にある.そのため,実験回数等を増やし,より精査した実験結果を得る方向で研究を進めている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験回数等を増やし,より精査した実験結果を得る方向で研究を進めている.十数個の切り欠き試験片を発注し,幾回かの実験を行い,その結果を経て,次の実験や試験片仕様を変更している.今後はき裂進展開始条件の精査に取り組む予定である.そのため,最終年度においても繰り越した研究費を用いて試験片を購入していく.
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