2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nippon Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡部 修一 日本工業大学, 工学部, 教授 (60220886)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | DLC膜 / 表面自由エネルギー / プラズマ処理 / 表面改質 / 生体適合性 |
Research Abstract |
医療分野では人工関節などの人体に使用する医療器具が多数存在する。人体に使用するためには無害でなければならないが、そうでないものも多い。それら人体に有害なものを人体に使用するためには、表面に薄膜をつけるなどして人体に適したものにしなければならない。本実験ではそのための表面自由エネルギーを制御できるDLC 膜の形成方法を模索した。 取り上げたDLC 膜は大気中で、高硬度、低摩擦、耐摩耗性、低相手攻撃性などトライボロジー特性に優れ、添加元素による性質の変化、化学的安定性など多くの特徴を持っている。また、近年この膜を生体利用する試みも行われるようになっている。そこで、DLC膜を形成した後に、それを外気に晒すことなく、形成装置と同一なチャンバー内にて、膜の極表面層を各種のガスプラズマによって改質処理する。具体的には,DLC膜表層に酸素を強制的に化学結合させることによって親水性表面(高表面自由エネルギー表面)を形成する検討を行った。膜の親水性を高めることでより生体適合性に優れるものに改質する事を狙っている。DLC 膜の表面を、様々なプラズマ生成条件で酸素プラズマ処理を行った結果、RF(プラズマ生成のための高周波)電力が100Wで処理した場合に最も表面自由エネルギーが高くなる事が確認できた。RF電力値を500Wまで上げると、100Wで処理した場合に比べ、わずかながら小さくなる現象が確認された。表面自由エネルギーの値は液適法で測定したが、処理前の値(45mN/m)に比べ、適正条件で処理した試料の値は85mN/mと2倍程度のエネルギー値の向上が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は酸素ガスを使用して,DLC膜表層に酸素を強制的に化学結合させることによって親水性表面を形成する検討を行い、プラズマ処理条件と表面自由エネルギー変化の関連について詳細な結果を得ることができた。この成果を生体応用するために必要となる金属基板であるNi-Ti合金板に適用し、プロテイン吸着性などの生体適合性評価を進めている。詳細な結果はまだ出てはいないが、このような実験進捗レベルは当初予定していたものに近いレベルであり、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度にはフッ化炭素ガスを使用して、今年度とは逆にDLC膜表層にC-F基を主とした低表面自由エネルギー層(撥水性表面を持つ層)を形成する検討を行うことを計画している。さらにはArガスを用いたプラズマ処理も併用して実施する。この処理では、膜表層におけるダングリングボンドの割合を強制的に増やすことになり、表面粗化の効果に加え、OやF原子との化学結合力強化の効果も期待される。 作製した試料をAES(オージェ電子分光分析)を用いて処理層組成の解析を実施し、その結果をフィードバックすることにより最適条件を検討する。さらには、FT-IRやRaman分光などを用いて膜の構造・組成評価を実施する。また、表面自由エネルギーは膜のトライボロジー特性にも大きく影響することから、生体応用を指向した各種の雰囲気中でのボールオンディスク摩擦試験による評価を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
少額の残金は、物品費の端数として生じたものである。また今年度は旅費の支出が無かったが、これは研究初年度とということもあり研究代表者自身の発表を行わなかったためである。 次年度の物品費の一部に相当させる予定である。また、研究成果については研究代表者自ら積極的に発表を行うことを考えている。
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