2013 Fiscal Year Research-status Report
新型インフルエンザ感染経路特定のためのシミュレーション技術の構築
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25420120
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
山川 勝史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90346114)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 流体力学 / 数値流体力学 / ウイルス / 感染 |
Research Abstract |
インフルエンザウイルス特有のパラメータを用いて気流軌道からの補正を行う手法により,空気感染ルート特定のためのシミュレーション技術構築を目指している.準備段階において,飛沫の蒸発と沈降のみをウイルスの運動に加算したが,これだけでも気流との明白な差異が見られた.つまりウイルスの軌跡は気流軌道と一致するというものでは無く,周りの環境により影響を受けやすい繊細なものであることが判明した.本研究ではウイルスの動きを高い精度で捕えるために様々なウイルスのパラメータを付加すると共に,ウイルスの最終到達点である人間への感染までを追う.具体的には室内におけるマクロ的なウイルスの振る舞いと,口鼻から侵入し肺に至るまでの気道内におけるミクロ的な振る舞いを総合的にシミュレーションすることを特徴としている.室内気流計算については,具体的に温度,湿度,飛沫の結合,ウイルス寿命,くしゃみや咳によるウイルス飛散条件,ヒトの呼吸による頭部周辺の気流変化と体内への取り込みを用いての計算を実施している.また気道計算については,現在高精度な形状モデルを構築中であり,最終的にはウイルスの到達位置の特定と,ヒトの抵抗力を考慮した最終的な感染判断までを計算する予定である.これにより感染者の咳やくしゃみにより飛散されたウイルス飛沫が,どのような経路を辿り新たに被感染者に到達し発症に至るまでの高精度なシミュレーションが可能となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
室内気流中のウイルスの挙動計算および,気道内におけるウイルスの付着位置特定について,H25年度は各々の計算技術の構築を行った.まず室内におけるシミュレーションについては①対流の影響を取り入れる②ウイルス飛沫の初期条件(くしゃみや咳による飛沫)に対する検討の2点を当初の目標と設定していた.前者についてはウイルスに対する対流の影響が非常に小さいことがその後の調査で明らかになったため,計算効率を考慮し優先順位を下げた.一方,人間の呼吸が,人間周り(頭部周り)への気流および気管内への流れへに対して影響が大きいと判断したため,こちらを優先的に行った.人間の呼吸については実験結果より肺活量と呼吸周期を計算に取り入れることに成功した.結果的に当初の予定を上回る進捗となった.またウイルス飛沫の初期条件に対する検討については,当初の予定通り,咳によるウイルス拡散の状況を実験結果を元に計算に取り込むことに成功している.次に気管内におけるシミュレーションについて,本年度の目標は気道形状のモデル化である.まず準備段階で進めてきた構造格子によるモデル形成(格子形成)には限界があり,今回非構造格子による作成へ切り替えた.かなりの労力を有したが,非構造格子(およびその格子上での流れ計算プログラムの作成まで含め)において目途を得た.これにより,より実形状に近い複雑な気道表面の表現が可能となった.以上より当初の計画以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
まず室内感染経路の特定と気道内流路計算を並行して行う.前者については,飛翔中と到達後のウイルス挙動の考慮を中心に行う.ウイルスが増殖能力を有したまま対象物(人間の喉や気管支)に到達することを初期感染とするなら,飛翔経路以外にも考慮すべき項目が挙げられる.最も大きな項目はウイルス寿命と到達後の人間の抵抗力である.飛翔中は実験結果から空気中の温度,湿度および浮遊時間により寿命(増殖能力の欠如)が決定されることが知られている.また到達した人間の種類(年齢・性別・居住環境)により感染確率は異なる.つまり年齢別地域別の罹患率調査結果はそのまま抵抗力としてパラメータ化できる.本項目における課題はこれらを如何にして計算へ組み込むかであり,具体的には各ウイルス特性や体内感染の為の計算結果を取り込むための調整に費やす.また,計算の大規模化(計算領域の拡大と計算時間(ウイルスの飛翔時間)の長大化)に合わせて計算の効率化・高速化に取り組む.具体的にはPCを用いた並列計算の調整であり,(少々手間が掛かっても)低コストで高効率な計算環境の構築と実装を目指す. 体内感染経路の特定では,気道モデルの完成後,呼吸運動による気道の動きを計算に取り入れる.具体的な計算については格子移動項を考慮したものになるが,具体的には非構造移動格子有限体積法を導入することで,スムーズ且つ高精度な計算が可能となり別段問題は無いと言える.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残額が2,060円と少額であった為. 次年度に繰り越し,消費税アップに伴う機器等の増額分の一部に補填する.
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Research Products
(4 results)