2013 Fiscal Year Research-status Report
高圧・高温雰囲気における組成が複雑な自由微小液滴の蒸発挙動の観察
Project/Area Number |
25420155
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
榎本 啓士 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (40316005)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自発点火 / 微細分裂 / 高温 / 高圧 / 液体燃料 |
Research Abstract |
H25年度の目標であった,s1) 高圧容器の設計・製作,s2) 高圧発生装置の設計・製作,s3) 高温雰囲気発生装置の設計・製作は,いずれも目標値(20MPa, 1000K)を達成している.この高圧・高温雰囲気に直径約30umの液滴を投入すると,自発点火して輝炎が形成されることがわかった.その結果の一部は“ヘキサデカン単一液滴の蒸発速度に及ぼす圧力の影響”(2013年度燃焼シンポジウム,2013年12月,東京),“ヘキサデカン単一液滴が示す高温高圧雰囲気における挙動”(2013年度JSAE中部支部学術研究講演会,2014年1月,愛知,優秀講演賞受賞)として発表しており,多くの関心を集めた.平行して,課題の意味を明確にするために,e1) 高圧雰囲気での実験,e2) 高圧・高温雰囲気での実験,e3) 高温雰囲気での実験,を実施した.その結果,r1) 高圧・高温雰囲気では自然対流の影響を加味した実験方法を確立する必要があること,r2) 様々な複雑燃料液滴で高温雰囲気中の微細分裂現象が確認されたこと,がわかった.自然対流の影響を加味するためには,液滴の進行方向を重力に対して反対向きにする必要がある.一方,高温雰囲気はブタンを用いた拡散火炎によって実現,拡散火炎中の液滴を観察した.ブタン拡散火炎の温度分布は二色比法と熱電対によって計測し,最高温度はおおむね1200Kであったので,高圧中で電熱線により形成される高温雰囲気とほぼ同じ温度であった.高圧中では輝炎を伴う自発点火が観察され,拡散火炎中では多くの複雑燃料で直径約30um以下の液滴が微細分裂する様子が観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H25年度の目標であった,1) 高圧容器の設計・製作,2) 高圧発生装置の設計・製作,3) 高温雰囲気発生装置の設計・製作は,いずれも目標値(20MPa, 1000K)を達成している.高圧容器は空気を使った加圧試験によって20MPaまで漏れがないことを確認した.実験部体積は内部環流装置を含めて約150ccであった.高圧発生装置は高圧容器実験部体積の約30倍の体積,4500ccの加圧シリンダと,同程度の作動油容器を備える電動ポンプ式油圧装置を組み合わせて制作した.シリンダ内径は300mm程度であり,配管,バルブ類を含め,20MPaの圧力を発生させても不具合は発生しなかった.このとき,加圧に要する時間は約30分であり,加圧前と後で容器内温度は変わらなかった.一方,高温雰囲気を発生させるために用いた電熱線方式は,高圧雰囲気(20MPa)では普通のニクロム線では十分な温度に達しなかったので,カンタル線を用いた.その結果,コイル状に成型したカンタル線の中心部分で1000K以上となることをシース熱電対(K型,シース径0.3mm)で確認し,当初の目的を達成している.この高圧・高温雰囲気に直径約30umの液滴を投入すると,自発点火して輝炎が形成されることがわかった.その結果の一部は“ヘキサデカン単一液滴の蒸発速度に及ぼす圧力の影響”(2013年度燃焼シンポジウム,2013年12月,東京),“ヘキサデカン単一液滴が示す高温高圧雰囲気における挙動”(2013年度JSAE中部支部学術研究講演会,2014年1月,愛知,優秀講演賞受賞)として発表しており,多くの関心を集めた.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度,課題の意味を明確にするために,e1) 高圧雰囲気での実験,e2) 高圧・高温雰囲気での実験,e3) 高温雰囲気での実験,を並行して実施した.その結果,r1) 高圧・高温雰囲気では自然対流の影響を加味した実験方法を確立する必要があること,r2) 様々な複雑燃料液滴で高温雰囲気中の微細分裂現象が確認されたこと,がわかった.自然対流の影響を加味するため,液滴の進行方向を重力に対して反対向きにする必要がある.同時に,観察可能な領域を広くするために,コイル型加熱法ではなく,壁面加熱法を用い,液滴の移動領域だけを高温にするための工夫を施す.このとき,同時に観察野の確保も行う.一方,高温雰囲気はブタンを用いた拡散火炎によって実現,拡散火炎中の液滴を観察した.ブタン拡散火炎の温度分布は二色比法と熱電対によって計測し,最高温度はおおむね1200Kであったので,高圧中で電熱線により形成される高温雰囲気とほぼ同じ温度であった.高圧中では輝炎を伴う自発点火が観察され,拡散火炎中では多くの複雑燃料で微細分裂が観察された.これらの結果から,H26年度は1) 雰囲気温度分布計測,2) 自発点火現象の詳細分析,3) 微細分裂現象の詳細確認,を中心に研究を進める.雰囲気温度計測は高い空間分解能と時間分解能が求められるので,光学干渉を用いる方法を検討する.このため,閃光時間が10nsec程度のパルスレーザー光源が必要となる.現在観察されている自発点火現象は再現性が低いので,再現性の高い領域の確認およびその領域を高温にするため金属ノズルを用いた噴射装置に改良する.微細分裂はその支配要素が全く未知のため,現象発現要件の探査から始める.
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Research Products
(8 results)