2013 Fiscal Year Research-status Report
正方晶ホイスラー合金をベースとした垂直型磁気抵抗素子の理論設計
Project/Area Number |
25420281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
三浦 良雄 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (10361198)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ハーフメタル強磁性体 |
Research Abstract |
平成25年度は、D022型正方晶ホイスラー合金として、Mn3Geを取り上げ、その電子状態及び磁気トンネル接合におけるスピン依存電気伝導の第一原理計算を行った。その結果、Mn3Gaは全対称(Δ1)バンドに関してハーフメタル(フェルミ準位に片方のスピンにのみ状態が存在する物質)ではないため、磁気トンネル接合(MTJ)の強磁性電極材料に用いた場合、Fe/MgO系MTJのようなΔ1バンドのコヒーレント伝導による大きなトンネル磁気抵抗(TMR)効果が得られないが、Mn3GeはMn3Gaよりも1つ価電子が多いためフェルミ準位が高エネルギー側にシフトし、Δ1バンドに関してハーフメタルとなることがわかった。 そのためMgOを有するMTJにおいて、スピン依存電気伝導の第一原理計算を行うと、Mn3GeはMn3Gaと比較して大きなTMR比を示すことがわかった。この結果はMn3Geが高スピン偏極電流源となり得ることを示唆している。 また、D022型Mn3Gaの一部をFe,Co,Niで置換したMn3-xZxGa(Z=Fe,Co,Ni)の電子状態と電気伝導の第一原理計算を行った。その結果、MnをFeで25%程度置換したMn2.5Fe0.5Gaにおいて、Δ1バンドに関してハーフメタルになり、またMgOを有するMTJにおいて10000%以上の大きなTMR比が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は前半に得られたMn3Geに関する結果について、査読付き論文[Y. Miura and M. Shirai, “Theoretical Study on Tunneling Magnetoresistance of Magnetic Tunnel Junctions with D022-MnZ (Z=Ga,Ge)”, IEEE Trans. Magn., Vol. 50, No. 1, pp. 1400504/1-4, 2014 (DOI: 10.1109/TMAG.2013.2276625)]に発表した。また、後半に得られた、Mn3-xZxGaの結果については、物理学会の春の年次大会においてポスター講演を行った。計画通り研究成果発表ができているため、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、①正方晶ホイスラー合金の結晶磁気異方性と磁化ダンピング定数の原子置換効果の解析②正方晶ホイスラー合金/MgAlO系MTJのスピン依存伝導の解析 を行う予定である。①では、原子置換により結晶磁気異方性の変化及び磁化ダンピング定数の変化を解析する。また、スピン軌道相互作用の2次摂動による解析を用いて、結晶磁気異方性と磁化ダンピングの相関について解析し、大きな垂直磁気異方性と低ダンピングを同時に得るための指針を提案する。②では、原子置換を施した正方晶ホイスラー合金とスピネル障壁MgAlOを用いたMTJのスピン依存伝導におけるバンドの折り畳み効果を明らかにし、もっとも大きなTMR効果が得られる合金を理論設計する。また、スピネル障壁MgAlOにおける陽イオンサイトdisoderがトンネル伝導に与える影響を明らかにする。
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