2015 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導薄膜の高臨界電流密度化に対する強化型ハイブリッド磁束ピンニングの構築
Project/Area Number |
25420292
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
末吉 哲郎 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (20315287)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高温超伝導体 / 臨界電流密度 / 磁束ピンニング / イオン照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度では,まず,ピン物質BaSnO3とYBa2Cu3Oyからなる擬似多層膜(YBa2Cu3Oy:完全な層,BaSnO3:擬似層‐孤立したナノアイランド状に堆積)について,基板温度,層数によりBaSnO3ナノ粒子のサイズや空間分布の制御を試み,Jcの磁場角度依存性に与える影響について調べた.高い基板温度では,B||cにおいて顕著なJcの向上がみられたことより,大きなナノ粒子ほどピン止めに寄与することを確認した.また,少ない層数(一層あたりのBaSnO3ナノ粒子は増)では,B||cのJcはドープ無しの純YBa2CuOy薄膜より低いが,ab面方向で顕著に高いJcのピークが生じたことより,面内で多数分布したBaSnO3が,B||abにおいて有効な面状のピンとして作用することを確認した. 次に,これらのBaSnO3/YBa2C3Oy擬似多層膜において,重イオン照射により柱状の照射欠陥を導入することで,1次元ピンと3次元ピンからなるハイブリッド磁束ピンニングを実現し,ナノ粒子のサイズ,空間分布が与える影響について調べた.ナノ粒子のピン止め効果は,磁束線の本数が多くなる高磁場,および柱状欠陥の影響が弱くなるc軸から傾いた磁場方向において顕著になり,ナノ粒子導入の照射試料の方が高いJc値を示した.このナノ粒子の正の効果は,基板温度の高い試料ほど顕著であることが確認された.B||abでのJcについては,ほとんどの試料で照射欠陥導入により減少の傾向を示したが,少ない層数(一層あたりのBaSnO3ナノ粒子は増)をもつ照射試料では,B||abでの顕著なJcのピークを維持しながら,照射によるB||cでのJcの向上も確認できた.以上の結果より,ハイブリッド磁束ピンニングのコンポーネントの一つであるナノ粒子のサイズ,空間分布制御により,ハイブリッド磁束ピンニングを高機能化できる可能性を示した.
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Research Products
(16 results)