2014 Fiscal Year Research-status Report
利得変調半導体レーザーのピコ秒時間ゲート機能を利用した応用計測
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25420413
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
和田 健司 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40240543)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 半導体レーザー / 利得変調 / ピコ秒パルス / 戻り光誘起雑音 / 時間ジッター / 光学距離測定 / 温度計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き平成26年度は,戻り光をもつ利得変調半導体レーザーを利用した応用計測として,パルス光源の時間ジッター計測と光ファイバーの光学長計測を行った. 時間ジッター計測では,昨年度の実験結果の妥当性や測定精度を見積もるために,対応する数値シミュレーションを行った.まず,直接遷移モデルにもとづく1550 nm半導体レーザーの利得スペクトルを理論的に求め,この表現を含む多モード半導体レーザーのレート方程式を導出した.さらに,ランジュバン雑音を考慮することにより,利得変調時に発生する時間ジッターをシミュレートできるレート方程式を導出した.この計算枠を用いて,単一モード,および多モード発振時の利得変調半導体レーザーの時間ジッター値が,実験値に整合することを数値的に確認するとともに,多モード発振時の時間ジッターの抑制効果は,従来とは異なる理由によって説明されることを見出した. 光ファイバーの光学長計測では,より精度の高い測定法を実現するために,昨年度の解析手法や測定条件を見直した.その結果,利得変調DFBレーザーを光源とする基本システムに含まれる光ファイバーループの光学長約21 mおよび,この光ファイバーループに1 kmの光ファイバーを接続した約1492 mの光ファイバーループ光学長に対して,用いた発振器の周波数精度±2.5 ppm以内で距離測定が行えることを確認した.これより,本測定法は,従来の光ファイバー光学長計測の報告例に対して,1-2桁高い精度の測定が可能であることがわかった. また,一連の光ファイバー光学長計測が温度変化の影響を受けやすいことから,逆に,この系を高精度な温度センサーとして利用する目的で基礎実験を進め,その実現可能性に対する感触を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度後半より,光ファイバーの光学長計測を進めるにつれて,当初の予測よりも高い精度で計測可能となることがわかってきたため,解析手法や測定条件の見直しを図った.その結果,従来の報告例よりも1-2桁高い精度で光ファイバーの光学長計測が行える可能性をもつことを確認した.このため,研究計画に挙げた光ファイバー多点センサーや血糖値モニターの実験進捗が滞ったが,研究の価値を高める上で必要な対処であったと考える.また,本測定法の特徴を生かす方向でセンサー応用を再考した結果,当初掲げた多点センサーではなく,高分解能温度センサーへの応用をめざすことにした.この場合,例えば1 km長の光ファイバーや数m長の偏波保持ファイバーをセンシング部とすることにより,0.001℃の高分解能特性をもつ温度センサーが実現できると見積もっている.現在,関連する基礎実験を行い,概ねその実現可能性を確認することができた.さらに,上の成果は,血糖値モニターにおける微弱な散乱光信号の強度変化を周波数変動として高分解能に検出できることを示唆しており,この応用に対する予備実験としての機能も果たした.したがって,研究計画は上方修正され,全体計画としては概ね当初の計画通り進んでいると認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は,高分解能温度センサーおよび血糖値モニターの実験を主に行う.当初計画では最終年度は,血糖値モニターを中心として,研究を進めてきた上で見出した応用研究にも注力するとしたが,高分解能温度センサーがこれに相当する.また両応用は,いずれも周波数の精密測定によって測定対象の分解能が決定されるため,それぞれより得られる情報が他方への参考になると予想され,研究遂行上の都合がよい.時間ジッターの実験値と数値見積もりの比較も含めて,以上の得られた結果を学会発表,論文発表としてまとめる予定である.
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Causes of Carryover |
現有装置として使用していた光スペクトラムアナライザがH26年度中に故障し,実験の遂行に支障をきたす事態となったため,当初,光ファイバー多点センサー用として予定していた予算を修理費に充てた.金額的にはほぼ同じであったが,少し残余が発生し,次年度使用額として残った.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残余金は光ファイバーの消耗品に使用する予定である.また,光ファイバー多点センサー用の予算がなくなってしまったが,研究計画に記載したように,高分解能温度センサーへの応用をめざす方向に転換したため,偏波保持ファイバーなど必要となる部品は現有しており,研究計画と予算使用計画の間に問題は生じないと認識している.
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Research Products
(15 results)