2013 Fiscal Year Research-status Report
超薄膜生成を目指した先端射出圧高速フィードバック制御搭載電動射出成形機の開発
Project/Area Number |
25420456
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
漆原 史朗 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 准教授 (90311092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 潔 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (40185187)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 反力推定オブザーバ / 過渡特性の改善 / 定常偏差の低減 / 粘弾性モデル / 摩擦フリーオブザーバ / オブザーバの低次元化 |
Research Abstract |
一般的な電動射出成形機では,樹脂圧力を力センサで検出することによって樹脂圧力の制御が行われている。しかしながら,力センサにはセンサ自体の構造的弱さやセンサ帯域の制限,センサ取付位置などの問題点が存在する。そこで現在の電動射出成形機には力センサレスでの圧力制御系が望まれている。先行研究では,二慣性共振モデルを用いた反力推定オブザーバが構築され,センサレスでの射出圧推定を実現している。しかしながら,既存の手法では充填工程から保圧工程への過渡状態における推定遅れと力伝達機構による射出力の伝達損失を考慮していないため定常偏差が問題となる。 本年度においては,まず過渡状態の推定遅れ改善手法として,射出材料の影響を考慮した反力推定オブザーバの設計法について検討した。射出材料を粘弾性モデルと負荷側機械の慣性モーメント増加分としてモデル化し,二慣性共振モデルに付加したモデルを提案した。さらに,実機ドライバのメモリ容量には制限があるため,提案モデルの低次元化を検討した。射出材料の影響を負荷側機械の慣性モーメント,粘性係数,慣性間の弾性要素のパラメータの微小増加分と見なすことで,従来モデルと同次元で,かつ射出材料の影響を考慮したモデルを提案している。低次元化したモデルを用いてオブザーバを再設計し, 圧力推定のシミュレーション解析結果を既存のオブザーバと比較することで,提案モデルを用いたオブザーバの有用性を検証した。 一方,定常偏差の改善手法として,摩擦フリーオブザーバの設計法について検討した。本研究では,力伝達効率を力センサレスで同定する方法を提案し,実験結果より値からセンサで測定した伝達効率とほぼ同値になることを確認している。また,同定した摩擦フリーオブザーバを用いることにより定常偏差を従来手法と比較して約90%低減できることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の平成25年度では、実機実験に基づいて有用性を検証した静止摩擦・クーロン摩擦・機械共振にロバストな力覚センシング技術をさらに発展させ、射出圧の立ち上がり・立ち下がりの推定遅れの改善を図り、射出圧の広帯域なセンシング技術を考案することを目的としていた。推定遅れの原因として、ベルト駆動射出機構であるためベルトの粘弾性の影響や時変となる樹脂の熱可塑性に起因していると考え,実験データをあらためて検証した。 過渡状態の推定遅れ改善手法として,射出材料の影響を考慮した反力推定オブザーバの設計法について検討し圧力推定のシミュレーション解析結果を既存のオブザーバと比較することで,提案モデルを用いたオブザーバの有用性を検証した。一方,定常偏差の改善手法として,摩擦フリーオブザーバの設計法について検討し,同定した摩擦フリーオブザーバを用いることにより定常偏差を従来手法と比較して約90%低減できることを確認した。 以上のことから,当初の目的を達成し,次年度のセンサレス力制御系への基盤を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度提案した射出材料の影響を考慮したオブザーバと摩擦フリーオブザーバを統合した新たなオブザーバ設計法を検討し,改良したセンサレス力覚推定アルゴリズムに基づいた先端射出圧フィードバック制御系を実現する。当初の計画通り、フィードバック制御系としては予め設定されたモータのトルク指令値の含有周波数に応じたゲインスケジュールを行う新たな制御系を構築する。「先端射出圧高速フィードバック制御」を実機に搭載し、動作性能や製品精度、エネルギー効率を含めた評価方法を検討する。
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