2014 Fiscal Year Research-status Report
変動二軸曲げを受ける鉄筋コンクリート柱の耐震性能向上に関する研究
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25420493
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
水野 英二 中部大学, 工学部, 教授 (80144129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 睦 中部大学, 工学部, 准教授 (00345927)
鈴木 森晶 愛知工業大学, 工学部, 教授 (90273276)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート / 耐震性能 / 鋼繊維補強コンクリート / 軸方向鉄筋の座屈 / 軸方向鉄筋の破断 / アンボンド / 二方方向載荷 / 繰り返し曲げ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の課題は,【異なるコンクリート・軸方向鉄筋の材料特性および軸方向鉄筋の構造的特性を考慮した鉄筋コンクリート(RC)柱の耐震性能の向上に関する検討】である.詳細な研究内容および実績は以下のようである. 1.材料的・構造的な補強を施したアンボンド型鋼繊維補強コンクリート(SFRC)柱の変動二軸曲げ実験 材料特性の異なる「鋼繊維コンクリート」および「軸方向鉄筋」を用いて「軸方向鉄筋」に構造的な破断防止策を施したアンボンド型SFRC柱の耐震性能の向上を検証するために,一定軸力下で変動二軸曲げを受けるRC柱の載荷実験を行った.ここでは,「載荷経路」および「横拘束筋間隔」を水準とした.実験には,断面200×200 mm,柱有効高さ1000 mm,せん断スパン比5を有するRC柱を用いた.RC柱は曲げ破壊先行型となるように,軸方向筋にはD10(SD345またはSUS304)を8本,横拘束筋にはD6(SD345)を柱基部からおよそ3D区間(D:柱幅)まで間隔 s = 65, 90, 105および120 mm(4水準)でそれぞれ配筋した.これに加え,構造的な補強として,柱基部塑性ヒンジ化領域の軸方向筋の座屈・破断が生じないような構造的な工夫(例えば,軸方向鉄筋とコンクリートとの間の付着を切る工夫)を施すことにより,さらに材料的な補強として,設計基準圧縮強度50 MPa~70 MPaを有する靱性率の異なる鋼繊維コンクリートを用いたアンボンド型SFRC柱を作製した. 2.繰り返し曲げを受けるRC柱の座屈解析モデルの構築 軸方向鉄筋の座屈ならびにコンクリートの繰り返し劣化を考慮することにより,繰り返し曲げを受けるRC柱の有限要素解析を実施した.ポストピーク大変位領域にて,実験結果と比較・検討することにより,RC柱の耐震性能を評価するための有限要素解析モデルの構築を目指した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に実施した実験的および解析的研究に関する達成度は以下のようである. 1.実験的研究:構造的ならびに材料的な観点から,(1)材料特性の異なる鋼繊維コンクリートならびに軸方向鉄筋を配置し,また(2)軸方向鉄筋と鋼繊維コンクリートとの間の付着を切ったアンボンド型鋼繊維補強コンクリート(SFRC)柱の耐震補強効果を検討するための実験を実施した.平成26年度の実験を実施するにあたって,ひずみを分散させるための構造的観点からの準備と高強度な軸方向鉄筋ならびに高強度な鋼繊維コンクリートを使用した材料的観点からの準備を進めた.前年度と同様,平成26年度も,二方向繰り返し載荷(斜め載荷および矩形載荷)下で,上記の耐震補強を施した計16体のRC柱に対して大変位域に至るまでの変形挙動を実験的に考察し,耐震性能の検討を行った.この結果,(1)軸方向鉄筋の座屈防止に対しては,鋼繊維コンクリートの使用が効果を発揮する,(2)軸方向鉄筋の破断防止に対しては,軸方向鉄筋と鋼繊維補強コンクリートとの間の付着を切った構造的な工夫(アンボンド化)が重要であるとの有意義な知見を得るに至った.よって,実験的研究としては満足のゆく達成度となった. 2.解析的研究:有限要素解析プログラムFEAPなどによるファイバー解析結果と実験結果とを比較し,軸方向鉄筋の座屈抑制および破断防止効果について検討した.軸方向鉄筋の座屈およびコンクリートの繰り返し劣化を考慮することができる有限要素ファイバー解析モデルを構築した.引き続き,解析的研究は平成27年度も実施する予定である.よって,解析的研究としてもおおむね満足のゆく達成度となった.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度(平成27年度)では, 3年間を通した研究課題【変動二軸曲げを受ける鉄筋コンクリート(RC)柱の耐震性能向上】のまとめを,以下の内容に対して行う. 1)多方向からの異なる載荷,例えば,変動二軸曲げなどを受けるRC柱の破壊性状の違いを検証することにより,軸方向筋の座屈・破断を抑制するための「RC柱にとって最適な材料特性ならびに構造特性」を特定し,RC柱基部の塑性ヒンジ部分のより合理的な補強案を検討する(水野・鈴木). 2)ポストピーク大変位領域までのRC柱の靭性率およびエネルギー吸収能を向上させるという観点より,RC柱基部の塑性ヒンジ部分の横拘束筋間隔と上記1)による最適な材料特性ならびに構造特性との関係を明確にする(水野・伊藤・鈴木). 3)平成26年度までの研究成果を基に,変動一軸曲げさらには変動二軸曲げを受けるRC柱の数値解析シミュレーションを実施し,特に,「載荷経路」,「横拘束筋間隔」および「付着あり・なし」の違いが塑性ヒンジ部分でのコンクリートの劣化防止および軸方向鉄筋の座屈抑制に与える影響を実験結果と比較・検討する.また,内部コンクリートへの拘束効果および耐震性能の向上策に関して解析的な評価を加える(水野・伊藤). 4)上記1)~3)の研究結果より,想定外の大規模地震時でもRC柱の倒壊を軽減させうる合理的な「耐震に対するRC柱の高性能化」を提案する.最終的には,平成25年度~平成26年度までの研究成果を基に,材料的および構造的な観点より,RC柱に対して最適と考えられる補強法を考案する.また,この結果に基づいて,将来的に「補強」および「補修」が容易になる対策についても検討する(全員).
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Causes of Carryover |
平成27年度の実験で使用する鉄筋コンクリート(RC)供試体の軸方向鉄筋(SUS304)を購入して平成26年度末までに引張強度試験を実施する計画であったが,軸方向鉄筋(SUS304)の在庫が見つからず,購入が平成27年度へ見送られることになった.よって,それに見合う使用予定金額が次年度使用額として生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の実験で使用する鉄筋コンクリート(RC)供試体の軸方向鉄筋(SUS304)の購入を行い,予定通りに使用する.
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