2014 Fiscal Year Research-status Report
都市縮減社会における区画整理と新たな市街地整備手法の開発検討
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25420622
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
今西 一男 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (40323191)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 都市縮減社会 / 市街地整備 / 土地区画整理事業 / 「未整備住宅地」 / 「土地区画整理事業を施行すべき区域」 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「都市縮減社会」における人口や経済の規模縮小に伴う土地需要の低下をふまえた、住民主体による新たな市街地整備手法の開発を行うことにある。この整備手法の開発・検討の素材として土地区画整理事業に着目している。 本研究では三つの研究課題を設定、各年度一つずつ検討する。各年度は半期(ステップ)に分け、6段階で研究を行う。平成25年度は「研究課題(1)都市縮減社会における市街地整備手法、特に区画整理の課題検討」を扱い、主に課題整理を行った。平成26年度は「研究課題(2)条件不利といえる市街地の住民主体による整備の成立条件検討」を扱い、以下に示す研究を実施した。 ステップ3:都市縮減社会において条件不利といえる市街地の把握と住民主体の整備事例調査準備…土地需要が低下し、公共・民間企業等による整備・開発から取り残された市街地では、区画整理に代わる住民主体の市街地整備手法の検討が必要である。そこで市街化区域内の住居系用途地域にあり、市街地開発事業の事業計画決定及び地区計画の都市計画決定がなされていない市街地を「未整備住宅地」と定義し、該当する全国635自治体を対象とする調査票調査を実施した。 ステップ4:都市縮減社会において条件不利といえる市街地での住民主体の整備事例調査…全国調査では506自治体(79.7%)から有効回答を得た。この結果より地域別、人口規模別に未整備住宅地の計画課題、整備状況を把握した。そして、住民主体の整備事例を抽出、条例に基づく「街づくり計画」へ転換し整備効果をあげている上尾市上平第二地区の事例研究を行った。また、全国調査の「結果概要報告」はWebページに掲載した。 以上の他、研究課題(1)で研究を進めた東京都周辺区部9区「土地区画整理事業を施行すべき区域」の整備課題に関する研究について論文をまとめ、第49回日本都市計画学会学術研究論文発表会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は研究課題(2)(ステップ3・4)の研究を実施した。全体的に、「未整備住宅地」という概念定義を用いて、研究計画調書のとおり都市縮減社会において条件不利といえる市街地での住民主体の整備事例調査を実施できた。その有効回答率も79.7%と信頼に足るものとなり、「結果概要報告」をまとめた点でも、「おおむね順調に進展している」と考えている。 ステップ3に関しては、まず全国調査の実施に向けた準備を滞りなく行うことができた。抽象的であった公共・民間企業等による整備・開発から取り残された市街地の概念について、既存研究や国土交通省「都市計画現況調査」を用いて「未整備住宅地」として概念定義したことは、その後の研究を進める上で有用であった。次に、調査対象の選定、調査票の作成、調査の実施については、研究代表者が指導する福島大学行政政策学類社会調査論研究室の実習としてとりくみ、遅滞なく実施することができた。 ステップ4に関しては、特に10~11月は回収した調査票を同じく実習として点検、入力し、引き続き集計・分析を進めることができた。その結果を元に12~2月には内容の精査を進め、「結果概要報告」をまとめるに至った。その過程で住民主体の整備事例を抽出することが出来、特に区画整理から条例に基づく「街づくり計画」へ転換し整備効果をあげている上尾市上平第二地区の事例に着目し、その現状と課題について2~3月に2回の現地踏査、1回の聞き取り調査を行うことができた。 以上の他、平成25年度に研究を進めた東京都周辺区部9区「土地区画整理事業を施行すべき区域」の整備課題に関する研究について、平成26年度中に論文をまとめて公表することができた。今後は平成26年度の研究を平成27年度において論文等にまとめる予定だが、当初計画に基づいて進行していることから「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25・26年度の研究はおおむね順調に進展したので、研究計画調書に即して最終年度となる平成27年度の研究も推進する予定である。そのためにも、これまでに引き続き既存の研究や統計を収集するとともに、行った研究の成果を論文等としてまとめ、公表したい。 この平成27年度は「研究課題(3)都市縮減社会に相応しい新たな市街地整備手法の事業モデル開発・検討」を扱う予定である。そのステップ5・6の内容・推進方策は以下のとおりである。 ステップ5:都市縮減社会に相応しい新たな市街地整備手法の事業モデル開発…ステップ1~4の知見に基づき、土地需要の低下という都市縮減社会にあっても実施可能な事業モデルをまとめる。そして、その実効性を評価するため、その適用可能性のある検討対象地域を1~2地域設定し、住民の参加を募ってのワークショップを企画する。検討対象地域はステップ3・4における全国調査の知見から設定することとし、事業モデルを適用した場合に考えられる効果や課題を住民に評価してもらうワークショップとすることを考えている。 ステップ6:都市縮減社会に相応しい新たな市街地整備手法の事業モデル検討…ステップ5で準備した住民ワークショップを実施し、それによって事業モデルへの住民から見た評価を把握する。この結果を含めた一連の研究結果に基づき、事業モデルを検討・完成する。その上で、都市縮減社会に相応しい新たな市街地整備手法として提案できるよう、調査結果等の論拠もまとめた報告書を作成し、本研究を完了させる。 以上を実施するためには、引き続き福島大学行政政策学類社会調査論研究室の実習としても研究にとりくむ。また、全国調査によって得られた情報を最大限に活用しながら対象を選定し、住民ワークショップの実施可能性を探っていく計画である。
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Remarks |
研究発表に掲載した論文は、福島大学行政政策学類社会調査論研究室ホームページ「Study」より閲覧可能。また、全国調査「結果概要報告」は同じく「project」より閲覧可能。
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Research Products
(5 results)