2014 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ東部都市のロウハウスにおける都市景観構成メカニズムの研究
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25420681
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
市原 出 東京工芸大学, 工学部, 教授 (20267529)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロウハウス / フィラデルフィア / ボストン / 街路景観 / 接地作法 / 最適再利用 / 持続性 / 可変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2013年度に行った海外学術調査の資料整理結果に基づき、さらに調査項目を精査した上で、2014年8月27日から9月3日の8日間、再度現地学術調査を行った。街路面と両側のロウハウス外壁面の3面によって構成され、内部的性質を有する街路の空間的特徴を捕捉するために、その形態要素を抽出することを目的とした。ボストンのビーコンヒル地区、フィラデルフィアのソサエティヒル、ワシントンスクエア西、リッテンハウススクエアの3地区で新たに合計365戸のロウハウス立面写真を撮影するとともに、街路幅員、立面高さ、街路樹の位置、各住戸の構成要素を記録した。前年度の調査成果と合わせ、街区全体の連続立面写真を作成し、街路断面比率の計測等、その資料整理と分析をほぼ終えた。現在、都市街路景観の持続性を保証するシステムに関する論文の執筆のために全体をオーガナイズする作業を行っている。 一方、ロウハウス内部空間の可変性については、建築専門誌には十分な資料がないことが確認できたため、各都市の図書館、資料館等に保存されているオリジナル図面の収集、解析に方針を変更した。その結果、ボストンの事例については「ボストンにおけるロウハウスの空間構成」として、今秋の日本建築学会大会で発表することとした(発表確定)。ニューヨークのロウハウスについては既に発表しており、今年度、フィラデルフィアのケースを取りまとめる。それにより、アメリカ東部主要3都市のロウハウスの内部空間の可変性に係る特徴の比較分析が可能になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書の「研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするか」の項に従い、以下のとおり進捗している。 1.各地区におけるロウハウスの土地との関係づけの作法を明らかにする:二度の学術調査による資料の整理、分析が終り、ボストンとフィラデルフィアの2都市について論文に取りまとめる作業を行っており、2015年度前半に2報投稿する。 2.回収事例の図面収集により、改変前後の空間形式を明らかにする:建築専門誌に分析に足る資料がないことを確認し、オリジナル図面の収集、解析に切り替えた。その結果、既報のニューヨークに加え、ボストンについて学会発表が確定した。フィラデルフィアについて今年度中に取りまとめが完了予定。 3.ロウハウスの都市景観形成要素の抽出により、アメニティ形成に有効な考え方を探る:1.と同時進行中。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査・分析の成果を論文としてまとめ、発表することを主眼とする。 その上で、調査範囲を拡げて再度学術調査を行う予定である。ボストンにおいてはサウスエンド、バックベイ地区の計画的につくられた街区との、また、フィラデルフィアについては中心市街地周縁地区で見られるリビングポーチによる街並みとの比較が可能かつ有効であると考えている。 研究計画書の研究計画・方法に記載した項目のうち、資料のデータベース化には手がつけられていない。収集したオリジナル図面の公開は法的に不可能で、また分析資料を公開できるかたちで整理することにも困難を感じている。この点については専門知識を有する人の協力を得たいと考えている。
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Causes of Carryover |
海外学術調査は当初3人で行う計画であったが、調査方法を詳細に検討した結果7人で行った。具体的には、連続立面写真撮影と記録、ロウハウス高さと街路樹位置等計測と記録、各住戸写真撮影に各2名、歩道景観撮影に1名の計7名で、太陽高度の関係で撮影不能の時間帯を除き滞在時間の全てを費やした。そのため旅費支出のみとなったが、研究遂行上不可避であるとの判断をした。一方で、資料整理・図面作成について人件費を計上していたが、上記を最優先したため支出しなかった。また、資料の状態により写真撮影となったため、資料複写費が発生しなかった。結果として、2013年度未使用額に約3万円を加えた額を2015年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は研究代表者のみが補足的な海外学術調査を行う計画であったが、調査対象範囲を拡げることでさらなる成果が期待できる。そのため少なくとも2人で調査を行いたい。その費用にあてる計画である。
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