2014 Fiscal Year Research-status Report
銅基合金中に形成されるナノ磁性粒子の特徴的組織と磁気特性の関係
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25420689
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
竹田 真帆人 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30188198)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ磁性体 / 磁区構造 / 直接観察 / 熱磁気曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
非磁性母相にナノ磁性粒子を分散すると、巨大磁気抵抗(GMR)効果やトンネル磁気抵抗(TMR)効果が見られ、これらの効果を活用することによりハードディスクなどの磁気記録装置の記録容量は飛躍的に増大した。MRAM研究に見られるように、磁気記録における大容量化、高速化、信頼性向上は、今後の情報処理技術においても最重要課題と認識され、全世界において精力的な研究がなされている。しかしながらナノ磁性微粒子の組織と磁気特性の関係については構造最適化や組成依存性、部品としての信頼性等、まだ未解明な現象も多く、基本的重要課題が山積しているのが現状である。本研究課題に連なる一連の研究で申請者等は銅基合金において見られるナノ磁性微粒子の特徴的な組織変化と磁気的特性の関係を研究課題として取り上げ、電子顕微鏡や種々の磁気特性方法によって系統的に調べている。本研究では、ナノグラニュラー磁性粒子の形状、組成、分布状況、磁化分布およびその時間的変化と磁気特性の関係を連続的に追跡しており、高機能性、高信頼性の素子を製造するという実用面でも有用な知見を取得することを視野に入れて研究遂行している。過去において実施した関連研究において申請者等はCu-Ni-Fe合金において通常の時効型合金では知られていないような析出形態のナノ磁性粒子が形成されること、これも時効温度や時間、組成に依存すること、特に従来予想されていなかったような析出形態で現状では最高水準のGMR特性が発現することを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度に研究対象として取り上げた試料はCu-Ni-Fe合金およびCu-Ni-Co合金である。これらの合金試料におけるナノ磁性粒子形成を組織学的には透過電子顕微鏡、EDX組成分析による元素マッピング、高分解能電子顕微鏡、電界放出型走査電子顕微鏡、EBSP方位解析装置等によって解析した。また磁気特性に関してはSQUID-MPMSによるDC磁化測定より飽和磁化、残留磁化、保磁力の測定を行った。高温からの急冷状態では超常磁性に近い磁気的状態が見られたことからAC磁化測定も行った。一方、今年度の研究計画であった熱磁気天秤法については装置改造にやや時間を要したものの、最終的には極めて高感度の熱変化計測法を得ることが可能となり、本研究で取り上げるような非常に磁化の小さい試料についても有用な測定データを取得できることを明らかにした。光電子顕微鏡観察についても単結晶性試料を用いることによってナノ磁性粒子の磁化分布が粒子サイズにより変化することを世界最高水準の分解能で確認することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように、現在までの研究経過は概ね順調に推移している。今年度は引き続き、析出形態と磁気特性の関係について詳細な知見を得ることを目指す。具体的には、EDX元素マッピングによる磁性粒子の組成変化、光電子顕微鏡による磁化分布の直接イメージング、熱磁気天秤法によるキュリー温度変化とナノ粒子間の磁気的相互作用、LLG計算による磁区構造の最適化、SQUID-PPMSによる磁気抵抗と組織依存性、SQUID-MPMSによるDCおよびAC磁化測定による磁気的状態の検討をCu-Ni-Fe合金、Cu-Ni-Co合金について行う。
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Causes of Carryover |
本研究では、ローレンツ顕微鏡を使用する予定であったが、電子線発生ならびに冷却水循環機構に不具合が発生している。物品費や旅費を節約したが両者の修理作業に関わる経費が予算残額では充当できないことが判明したため、2014年度は修理作業を発注できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
メーカー側と相談し、この装置修理費用を精査し、昨年度に保留した予算と今年度支給予算を合わせて修理費用が賄えるかを検討する。充当できれば出来るだけ早期に機能回復させる予定である。万一、機能回復に予算以上の経費が掛かるようで有れば学外機関の装置借用費、そのための交通費として使用を予定している。
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Research Products
(7 results)