2014 Fiscal Year Research-status Report
金属化合物の化学結合のエネルギー表現と水素貯蔵化合物の量子設計への応用
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25420695
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Research Institution | Toyota Physical and Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
森永 正彦 公益財団法人豊田理化学研究所, その他部局等, フェロー (50126950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 正人 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10397466)
鎌土 重晴 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30152846)
湯川 宏 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50293676)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 原子化エネルギー / 水素貯蔵材料 / 金属化合物 / 炭化物 / 窒化物 / 硫化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素を利用した社会システムの構築は、現在の最重要課題であり、燃料電池自動車も最近、販売されている。本研究では、多様な化学結合をもつ各種金属間化合物(ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物他)の化学結合を、同一の原子化エネルギーの視点から捉え直し、各種非金属元素(ホウ素、炭素、窒素、硫黄他)の特徴や化合物形成への役割を統一的に理解し、それを基に非金属元素を含む新規な自動車用水素貯蔵化合物を開発することを目指している。平成26年度においては、各種の金属化合物の原子化エネルギーを決定した。さらに、3成分マグネシウム化合物の作製を行い、以下の結果を得た。 昨年度の遷移金属M(Ti, Cr, Fe)のホウ化物,酸化物、フッ化物に続き、炭化物、窒化物、硫化物において原子化エネルギーを決定した。炭化物、窒化物では、金属元素(M)の組成比率が高くなると、炭素(C)、窒素(N)、金属元素(M)の原子化エネルギーがすべて増加する。この組成依存性はホウ化物と同じである。これらの化合物では、M-C, M-N原子間、およびM-M原子間の結合が、化合物の形成に大きな役割を担っている。 硫化物では、金属元素(M)によって原子化エネルギーの組成依存性が変化する。すなわち、Cr硫化物では、金属元素(M=Cr)の組成比率が高くなると、硫黄(S)の原子化エネルギーは減少し、金属元素の原子化エネルギーは増加し、酸化物と同じ傾向を示す。しかし、Ti硫化物では、金属元素(M=Ti)の組成比率が高くなると、硫黄(S)、金属元素の原子化エネルギーは共に増加し、ホウ化物と同じ傾向を示す。このように、同一の原子化エネルギーの視点から、各種金属化合物の化学結合の特徴と違いを明らかにした。 さらに、ボールミル法を用いて、非金属元素を含む3成分マグネシウム化合物を作製し、X線回折実験などを行って、新規な水素貯蔵化合物の探索を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属間化合物の化学結合の成り立ちを、非遷移金属側から初めて調べることができた。遷移金属のホウ化物、酸化物、フッ化物、炭化物 窒化物 硫化物の間には化学結合に大きな違いがあることを、原子化エネルギーの解析を通して明確に示すことができた。これらは従来の全エネルギーのみの解析からは分からない新しい情報である。 また、非金属元素を含む水素貯蔵化合物の開発の可能性を探求するための実験を行い、X線や透過型電子顕微鏡を用いて化合物の生成傾向を調べた。今後、水素貯蔵化合物の探索方向を一歩ずつ狭めていく予定である。このように、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度からの研究項目である「非金属元素から見た機能材料の量子設計基盤の構築」を進める。さらに、「非金属元素を含む新規マグネシウム系水素貯蔵化合物の探索」を行う。このため、マグネシウム系に絞り、その合金および化合物の電子構造を計算し、原子化エネルギーを求め、水素貯蔵化合物の設計基盤作りを進める。そして、計算と実験を組み合わせて、新規な水素貯蔵化合物の探索を粘り強く推進する。これらの成果を基に、原子化エネルギーから見た金属化合物の量子材料設計の基盤を固めていく。
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Causes of Carryover |
設置を予定していた理論計算用の計算機を他予算で購入したため。また、日本金属学会の春期大会での学会賞受賞講演のために当初予定していた出張費用を、日本金属学会側が負担してくれたため。また、膨大な計算データ整理のための物品の購入と成果発表の予定を次年度に行うことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の次年度使用額(約478千円)と本年度分の当初の助成金(1,300千円)の計1,778千円の使用内訳は、物品費(約1,178千円)、旅費(約300千円)、研究成果投稿料(約200千円)、その他(約100千円)である。計算データ整理用物品費と研究成果発表用費用の外は、試料作製など実験費用に充当する予定である。
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