2013 Fiscal Year Research-status Report
強固な粒間結合を有するex situ法MgB2線材の開発
Project/Area Number |
25420696
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
藤井 宏樹 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80354306)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 二硼化マグネシウム / 超伝導線材 / ex situ法 / 充填粉精製 / 酸化マグネシウム除去 / 溶液処理 |
Research Abstract |
MgB2の硼素の炭素置換は、MgB2の上部臨界磁界(Bc2)の改善、即ち、高磁界特性の改善に最も有効な手法の一つであるが、ex situ法における炭素置換は、MgB2粒表面のMgO層の存在によって反応が起こりづらい。これまで、MgB2粉の酸性溶液処理やミリング処理など、化学的及び機械的手法でMgO層を除去すると、炭素置換反応が促進されることを報告してきたが、高磁界側では線材試料の臨界電流密度(Jc)特性は改善されるものの、低磁界側では逆に劣化する。これは、炭素置換反応に伴い、硼素が放出され、弱結合を引き起こしているためだと考えられる。そこで、予め炭素置換した粉末Mg(B,C)2を充填粉として用いると、硼素放出による弱結合が軽減されるものと期待される。 Mg(B,C)2は市販されておらず、自作する必要があるが、自作Mg(B,C)2粉には多量のMgOが含まれており、優れたJc特性を示す線材を得るためには、このMgOの除去が肝要となる。また、活性な充填粉を得るために、出発原料粉の影響も大きいものと考えられる。 25年度は上記二点について検討を行った。MgOは有機酸でも溶解除去できるが、酢酸で速やかに除去できることがわかった。こうして得られた精製粉を用いて作製した線材試料のJc特性は向上した。 一方、出発原料に関しては、劣化しやすいものの、粒径の小さいMgの方が、劣化しづらい大きいMgよりも均質混合に有利であり、より高品質なMg(B,C)2粉が得られ、その線材試料のJc特性も優れていた。硼素に関しては、非常に高価な試薬を用いて作製したMg(B,C)2粉は、より高品質であったが、溶液処理後の品質で比較すると、安価な試薬でも高価な試薬を用いて作製した粉末と同等の品質となった。こうして得られた精製粉を用いて作製した線材試料のJc特性は、どちらの硼素試薬を用いても同程度となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度導入した高エネルギー遊星ボールミル装置で、機械的に粉砕、活性化させたMgB2粉末を不活性ガス中で取り扱うことができるようになり、より精確な実験のできる環境が整った。また、市販MgB2粉は製造ロットによって品質に大きな差があり、これらの粉末を用いて作製した線材のJc特性も大きく異なることがわかってきた。遵って、自作Mg(B,C)2粉の作製及び精製が重要であるものと認識した。本年度は、その作製条件ならびに焼成粉の精製法を検討し、出発原料の選定、焼成粉の精製法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで充填粉の精製プロセスを検討してきたが、線材のJc特性はまだまだ改善の余地がある。ex situ法で最も劣っている点の一つが結晶粒間の弱結合である。そこで、Mg(B,C)2粉の精製による強結合化を図る一方、ex situ法とin situ法を組み合わせたハイブリッド法による結合の改善を図る。ハイブリッド法はこれまで幾つか報告されているが、充填粉を大気中で取り扱っており、また、炭素置換粉Mg(B,C)2では行われておらず、より注意深い作製環境での効果を調べる。 一方、充填率の向上によっても、超伝導相の増加によるJc特性の改善の他、結合の改善ももたらされると考えられる。そこで、充填率とJc特性の相関関係を調べ、充填率が増大するような加工条件の最適化を行う。 これまで単芯テープ線を作製して評価を行ってきたが、実用化に向けて上記作製法に基づき、多芯丸線の作製、評価に取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬を購入するつもりであったが、しばらく購入は不要なほど残量があり、予め購入しても劣化する恐れがある。それで、次年度(26年度)、残量が僅かになってから購入することにしたため。 MgやB、有機溶媒などの試薬の他、純鉄の無垢棒を購入する。その他、前年度退職者から譲り受けたグローブボックスに、ガス循環精製の設備を取り付けるための一連の配管部品を購入する。また、粉末及び線材試料を評価するための実験装置使用料に充てる。
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