2013 Fiscal Year Research-status Report
次世代鉄系酸化物磁石の開拓を目指したフェライト単結晶の育成と磁気異方性の評価
Project/Area Number |
25420710
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 裕之 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00202218)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | フェライト磁石 / 永久磁石 / 磁気異方性 / 単結晶 / フラックス法 |
Research Abstract |
現在民生品として用いられているフェライト磁石の代表的なものとして,母物質のM型ストロンチウムフェライトSrFe12O19のFe3+サイトをCo2+で置換し,その電荷補償としてSr2+をLa3+で置換するいわゆるLa-Co置換系磁石がある.このCo置換に伴い主に磁気異方性が増大するため,商品価値が発生している.我々は過去のプロジェクトでこのLa-Co系を研究対象として集中的に取り上げてきたが,ほのCoの役割を解明するための1つの方策として,Co類似の元素での置換を試み,特にその単結晶育成を目指した.最初の試みとして周期表中でCoの下にRhを取り上げた,ある種のフェライト(Fe2O3の準安定相)でRhを置換すると異方性が著しく増大するという報告が最近なされていることもRhを選んだ理由の1つである.まず最初にLa-Co系と同様にRhが2価になることを想定してLa-Rh置換系の結晶の育成を目指した.育成法としてはここ数年の間に確立した手法であるNaOフラックス法を用いた.育成した単結晶のWDX分析から,Laはほぼ仕込み通りに置換されるものの,Rhはほとんど結晶内に取込まれないことがわかった.すなわち,RhはM型フェライト中で2価ではない可能性が大きい,この結果を受けて,次にLaを加えずRhのみの置換を目指した結晶育成を行った.その結果わずかに結晶内にRhがとりこまれ,その結果磁気胃異方性がわずかに増大するという結果が得られた.現時点では組成依存性を議論できる段階には至っていないが,これまで異方性を増大させる元素はCoのみしか知られていなかったので,非常に興味深い示唆的な結果と考えている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的としては,「実用材周辺の置換系フェライト単結晶を系統的に作製し,その磁気特性をより原理的な観点から再評価し,その情報をもとに磁気特性(自発磁化の大きさや磁気異方性)に対する置換元素の役割を改めて評価し,さらには次世代の高性能フェライト磁石の開発指針を提案することを目指す」ことを掲げた.平成25年度中はLa-Co系の対照系としてLa-Rh系の育成を試みたが,La-Co系にちょうど相当するようなLa-Rh置換系の育成は(少なくともNa2Oフラックス法を用いた場合)困難であることがわかった,その代わりRhのみの置換系単結晶の育成が可能で,Rhのみ置換系では異方性を増大する傾向があることが分かった.これまでCo以外の置換元素で異方性を増大させる元素が知られていなかったことを考慮すると,この結果は異方性機構の考察のヒントを与えると期待される.ただし,まだRh組成をコントロールできていないため,系統的な議論をする段階には至っていない,今後の期間で.系統的な結晶育成法の確立を目指し,機構の議論む予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度中の研究から,SrFe12O19のRhのみ置換系の単結晶の育成が可能であり,またその系が基礎研究の観点で興味深い対象であることが判明した.今後はRh置換系試料の系統的育成を目指し,その後Rh原子の役割をCoと比較しつつ議論することになる.また,必要に応じてRh以外の置換元素も今後検討する.さらに,Srフェライト系を離れ,Ca系フェライトの結晶育成も試みる予定である.Ca系は現在販売されている最も強力な新世代フェライト磁石であるが,構造も含めて未解明の部分が多く,単結晶育成に成功すればインパクトが大きい,この場合,適切なフラックスも未知であるため敷居が高く,成功する保証は全くないが,Sr系の研究と平行して行う予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低温実験用の寒剤代が支出の多くを占めるが、年度末まで額が確定しなかったため。 H26年度中に低温実験用の寒剤代として使用予定。
|