2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25420859
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
森田 泰弘 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (80230134)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 宇宙システム制御 |
Research Abstract |
本研究は、宇宙システムに不可欠のロバスト制御の分野を大きく発展させるべく、パーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)という新しい概念を世界でも初めて宇宙システムのロバスト制御に適用すべく推進しているものである。 パーティクル・フィルタは統計数理の分野で発展してきた高次元状態ベクトル推定の新しい手法である。状態ベクトルだけでなくシステム・パラメータをも同時かつ直接に推定することができるため、パラメータの不確定の幅に制約がない上にノミナル特性の劣化もないのが特徴である。これは、ロバスト制御の分野の大いなる進化と言うことができる。 パーティクル・フィルタ理論のもう一つの大きな利点はアルゴリズムのシンプル性にある。つまり、これまでのロバスト制御理論においては、理論に基づき設計される制御器は一般に高次の特性をもち、そのままでは実際の宇宙システムへの適用が不可能に近い。このため、制御の本質を損なうことなく制御器の次数を低減するための考察に相当の困難を極めてきた。一方、パーティクル・フィルタの理論によれば、制御のアルゴリズム自体は極めて簡便かつ高いロバスト性能を獲得することが可能である。 これらの長所に対する一方で、パーティクル・フィルタ理論を実システムに適用するための課題については未知数である。平成25年度は、パーティクル・フィルタ理論を実システムに適用するための課題の抽出を行った。本質的な課題としては、演算に極めて多くの時間を要するということと演算途中で粒子の伝搬の不全が起こりうるということのみであることを識別した。パーティクル・フィルタ理論を宇宙システムに適用するためにはこの課題の解決を図ればよく、本研究の課題が明確になったということができる。 なお、当初計画どおり、リューブリァーナ大学と連携して研究を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、パーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)という統計数理学的な概念を世界でも初めて宇宙システムのロバスト制御に適用するための一連の研究であり、ロバスト制御理論の世界に大いなる飛躍をもたらしうる極めて独創的な研究ということができる。平成22年度から24年度における研究では、パーティクル・フィルタ理論の定式化を行い、簡易な数学モデル上でその有効性を示した。本申請における研究では、これまでの成果をさらに拡張し、実システムにパーティクル・フィルタ理論を適用するための課題の識別とその解決を図ることにより、パーティクル・フィルタ理論の確立を目指し、実応用への道を拓くことを目的としている。 平成25年度は本研究の最初の年度であり、最も重要な研究項目として、パーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)理論を実システムに適用するにあたっての課題の抽出を行った。制御対象となる実システムとしては、運用中の小型の衛星打ち上げロケットやエアロンチなど研究開発中の先進的ロケットシステム、あるいは、回収や再利用のできる将来型の宇宙輸送システムなどを想定している。 本質的な課題としては、演算に極めて多くの時間を要するということと演算途中で粒子の伝搬の不全が起こりうるということのみであることを識別した。この理論を宇宙システムに適用するためにはこの課題の解決を図ればよく、本研究の課題が明確になったということができる。 このように、平成25年度は当初の計画どおり、最も重要な研究項目としてパーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)理論を実システムに適用するにあたっての課題の抽出を行い、研究課題を具体的に設定した。よって、本年度の研究実績の達成度としては、充分と言うことができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、本研究の集大成として、平成25年度において抽出した課題の解決を行うとともに、パーティクル・フィルタ(粒子フィルタ)という新しい制御の概念を実システムに適用するための方法論を確立する。 H∞制御やμ制御などいわゆるポスト現代制御理論に代表されるような従来のロバスト制御は、マクロな評価関数的制御系設計手法であり、膨大な量の試行錯誤的設計プロセスを必要とした。また、ロバスト性の保証範囲が限定されていることやノミナルモデルに対する制御特性が劣化してしまうという欠点もあった。パーティクル・フィルタはこれらの課題を解決しうる制御理論であり、ロバスト制御の新時代を拓く極めて独創的なアイディアであるということができる。 具体的な研究内容としては、実際の宇宙システムを模擬した動特性モデル(衛星打ち上げロケット、エアロンチ・ビークルや再使用ロケット)を構築、これらに対してパーティクル・フィルタを応用して、その有効性を定量的に示す。すなわち、注目するのは、制御対象のパラメータ変動に対するロバスト性と制御対象のノミナルな動特性に対する制御特性である。その性能と有効性は、数値シミュレーション手法により実証する。 なお、平成26年度以降の研究の実施に当たっては、前年度と同様に宇宙機の制御の分野において欧米でも最先端の研究活動を行っているコロラド大学、及びリューブリァーナ大学と連携して進める。両大学は、ロバスト制御の分野はもちろんのこと、統計数理学の分野でも先進的な研究を進めており、統計数理学における世界の最新動向にも詳しく、本研究を評価するのに最適であるといえる。申請している経費は、制御アルゴリズム設計のためのコンピュータ・コードの構築、制御アルゴリズムの設計、両大学における研究打ち合わせ、また国際会議における成果の発表のためのものである。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
業務上、出張期間に変更が生じ、年度をまたぐ出張となったため。 次年度はそのような変更がないように計画し、使用する予定。
|