2013 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類のフリーズドライ精子における高温耐性獲得に関する研究
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25430188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
日下部 博一 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (60344579)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルカリ性 / 水素イオン濃度 / 高温耐性獲得 / フリーズドライ精子 / 酸性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マウスのフリーズドライ精子(凍結乾燥精子)を高温条件下(例えば日本の夏の気温条件下、30~40℃)に1か月程度おいても、その精子にDNAダメージが蓄積しない方法をみつけることである。平成25年度においては、フリーズドライ精子の高温耐性を高めるためのヒントとなる事象を見つけたので、それについて報告する。カルシウムイオンのキレート剤であるEGTAを含むトリス緩衝液(ETBS)を精子のフリーズドライ用溶液として使用し、ETBSのpHを5.0から8.4までの範囲で調整した。これらにマウス精子を懸濁して4℃で3日間処理した後、フリーズドライした。そのフリーズドライ精子を4℃で3日間保存した場合、精子のDNAダメージは溶液のpHによらず新鮮精子のそれとほぼ同レベルを示した。一方、50℃で3日間高温処理すると、ETBS のpHの低下に伴って精子のDNAダメージのレベルが高くなった。さらに中性から弱アルカリ性付近(pH7.4~8.4)のETBSを用いてフリーズドライした精子を、卵細胞質内精子注入法により未受精卵に注入し、受精卵の染色体を調べた。その結果、4℃と50℃に置いたフリーズドライ精子の構造的染色体異常の頻度の差が、ETBSのpHが高くなるにつれて小さくなることが判明した。以上のことから、フリーズドライ精子の高温処理によるDNAダメージの誘発は、フリーズドライ用溶液の低いpHに依存することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フリーズドライ精子の室温保存によってなぜDNA(染色体)ダメージが蓄積するのか、まずはその原因の候補となる事象を高温処理による短期間実験法によって見つけたことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
フリーズドライ精子の高温・低pH依存性のDNAダメージ誘発のメカニズムを探るため、既存のフリーズドライ用溶液に様々な分子、例えば各種イオンや別のキレート剤を付加することが今後の研究を推進するために必要と考えている。そして、最良の高温耐性獲得条件をもとに、室温付近(28~40℃付近)の保存によって、どの程度までDNAダメージの蓄積を遅延させることが可能なのかを、着床前後の胚発生の観察を含めた解析によって明らかにするのが今後の課題となる。
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